さて、「日常茶飯事」という言葉があるように、日本人にとってお茶は非常に身近な飲料です。その植物としての、そして飲料としての起源はどこにあるのでしょうか。
植物としてのチャの起源は、中国雲南省あたりの亜熱帯地方とされています。また、今日多くの国で生産されている茶ですが、その製造方法の起源も中国にあります。
中国で茶が発見されたのは、神話時代にまで遡るとされていますが、茶を示していると推定できる文書として最古のものは、前漢時代に四川省成都で記された記録です。つまり喫茶の起源は、少なくとも2000年以上前ということになります。
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それでは、日本の茶についてはどうでしょうか。
まず、日本の茶樹ですが、栽培されているもののほかに、いわゆる山茶として山間部に自生しているものも各地にみられます。ところが、それらが元々自生していたのか、あるいは人為的に持ち込まれたものなのかについては、今日でも結論が出ておりません。
一方、日本の喫茶の起源についても諸説があり、いわゆる正史として最も古いとされているのは平安時代初期の「日本後紀」の記述です。これによると、815年4月近江の国で大僧都の永忠が、自ら茶を煎じて嵯峨天皇に差し上げたとされています。
その後、日本のお茶は中国と異なる経緯をたどって今日まで発展しました。日頃何気なく飲んでいる日本茶ですが、実はその歴史をたどると、世界的にも極めて稀有なお茶であることがわかります。
(第2話に続く)
【著者略歴】
やまぐち・ゆういち 1960年神奈川県生まれ。87年筑波大学大学院卒、農水省入省、93年から野菜茶業研究所で製茶の研究に携わる。現在、同所茶生産省力技術研究チーム上席研究員。