コラム

「茶」は語る

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【山口 優一 野菜茶業研究所】
輸出で躍進した静岡のお茶

第4回

 前回までは、日本のお茶の歴史と特徴を語りました。今回は国内の主な産地について。

富士山が見える静岡の茶畑  まず、日本のお茶の故郷といえるのが京都の宇治です。
 宇治茶の歴史は13世紀のはじめ、栂尾高山寺の僧、明恵上人によって開かれたとされています。その後お茶は、茶道という一つの精神文化にまで発展しましたが、その過程でも宇治茶が重用されたことは言うまでもありません。
 前回ご紹介したように、煎茶の製造方法がつくり出されたのも宇治でした。現在でも、戦国時代から続く宇治の茶商がその伝統を守っています。抹茶、煎茶、玉露(摘採前に被覆を行う高級煎茶)なども日本茶の源流として最高級の品質を誇ります。

 現在、お茶の生産量が最も多いのは静岡県で、国内生産の4割以上を占めます。
 静岡の茶業が飛躍的に発展したのは明治以降で、その背景には温暖な気候条件と、当時、お茶は輸出品としてとても重要で、その中心が清水港だったからです。お茶の輸出興隆とともに製茶機械の開発も進み、静岡は茶業近代化の中心となりました。
 また、県内中西部の牧之原台地などで製造されている深蒸し茶(蒸し時間を長くした煎茶)は、特に関東で評判となり、今も多く生産されています。
 安倍川上流の本山茶、大井川上流の川根茶、天竜川上流の天竜茶、といった山間地の煎茶にも素晴らしい品質のものが多くあります。

 静岡に次ぐのが鹿児島県です。知覧、枕崎、大隅といった産地が有名です。
 鹿児島は、元々紅茶の産地でしたが、昭和40年代から煎茶に移行し、広大な土地を活かした大規模・大量生産による効率的な茶業が今も行われています。近年は品質の向上も著しく、さまざまなブランドを確立しつつあります。
 そのほか、埼玉の狭山茶、福岡の八女茶など、とてもここでは紹介しきれないほど多くの茶産地があります。土地ごとの味わいがあるので、是非色々な産地のお茶を味わっていただきたいものです。


(写真)
富士山が見える静岡の茶畑

(2010.11.17)