先日、ある会合でベテランのジャーナリストが「最近の農業者の目は輝いている、石油危機以来のことだ」と言っていた。虚をつかれた思いがした。35年前の石油危機のときも、穀物危機と重なって、またそれに続く経済不況とも重なって、ちょうどいまの状況と同じだった。あの時も世間の目は農業に向かっていた。
その上、いまは総選挙を間近に控えている。一昨年の参議院選挙で与党が大敗して以来、農村の、ことに農業者の政治動向は与党だけでなく、野党の政治家にとっても見過ごしできない状況になり、農業者の要求に応えて、いくつかの対策を行っている。しかし、それは、ともすると目先の応急対策だけを重視しがちになっている。それに幻惑されてはならない。
当面の対策も大事だが、国民や候補者が注目しているいまこそ、農業の惨状を、その根底から理解してもらい、今後の農業発展のための根本的な政治改革を要求する絶好の機会だろう。いまなら大声で叫ばなくても、小声で言うだけでも聞いて理解してくれるだろう。だからこそ、皮相的な理解ではなく、いまの農業危機をもたらした根底的な原因と制度の根幹が何であるか、についての深い理解を求めるべきだろう。そして、候補者たちは日本農業の進路をどう考え、どのような制度改革を約束するのかを、じっくり聞く機会である。
(前回 大規模農家寄りの減反アンケート)