昨日になって、ようやく衆議院が解散された。総選挙は8月30日になるようだ。それまでの40日間、各政党は政策を争うことになる。農政は最重要な論点になるだろう。2大政党は、まだ政権公約を発表していないが、新聞などで伝えられているものも含めて、この欄で何回か検討してみよう。
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まず、農政の対象は誰か、という問題を考えよう。これは、農政の恩恵を直接に受け、トクをするのは誰か、という問題ではない。それは、農政の対象を誰にすれば、国民全体にとって一番いいか、という問題である。もっと正確に言おう。国民全体ではなく、大部分の国民と言うべきである。ごく一部の国民は恩恵を受けなくても止むを得ない。それが民主主義というものだ。蛇足だが付け加えよう。それは1人1票で決めるべきことだ。農協総会と同じで、株主総会とは違う。
さて、自民党は農政の対象を「担い手」に限定する、という。農業者を「担い手」とそうでない農業者に選別し、認定して、「担い手」でない農業者は農政の対象にしないという考えである。最近では「担い手」は4ヘクタール以上、という認定条件を緩めているが、しかし、考えの根本は変えていないようだ。
これに対して、民主党は「販売農家」に限定するようだが、「販売農家」のしっかりした定義が分からない。農水省の定義では、「販売農家」とは、農産物の販売額が50万円以上の農家である。これは全農家の59%に過ぎない。民主党は残りの41%の農家は農政の対象にしない、というのだろうか。
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筆者はこう考える。農政の対象をどうするかは、農政の目的が何か、によって決まる。食糧自給率の向上が農政の重大な目的だというのなら、それが大多数の国民の願いなら、食糧を作っている全ての人を農政の対象にすべきではないか。目的がはっきりしていないから、バラマキのように見え、バラマキ批判をおそれて対象農家を無理に限定しているようにみえる。困ったことだ。
(前回 いま、農業者は輝いている)