コラム

「正義派の農政論」

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【森島 賢】
全政党が食糧自給率の向上を公約

 2大政党はじめ全ての主要な政党は、政権公約で農政の最重要な目的として、食糧自給率の向上を掲げている。全政党が数値目標も示している。この目標を達成するために、価格や所得を補償する制度の充実を公約していることも共通している。数年前と様変わりになった。第3党を目指す政党の政権公約を、各党ごとに見てみよう。

 2大政党に続く第3党を目指す政党も含めて、主要な政党の政権公約を見ると、全ての政党が、農政の最重要な目的として、食糧自給率の向上を掲げている。全政党が数値目標も示している。この目標を達成するために、価格や所得を補償する制度の充実を公約していることも共通している。では、第3党を目指す各政党はどのような方法で自給率を高めようとしているのか。

 公明党は食料安全保障について国家としての基本方針の策定を公約している。これは高く評価できる。しかし、構造改革を推進するという。それは小泉構造改革と同じなのか違うのか分からない。違うのなら、どう違うのか示してほしい。また農産物の輸出促進を公約しているが、自給率向上のための政策としては、この政策は間違いだったし、実際に失敗したのではないか。
 共産党がいうWTOの根本的な見直し、FTAなどに反対、という公約は評価できる。また不足払い制度の基準を過去の市場価格でなく、生産費を基準にすることも評価できる。しかし、市場を全く無視するのだろうか。市場の機能を利用しながら、市場価格を生産費に近づける制度をしっかり作り、それでも生産費を償えないばあいに不足分を支払う、という制度を構想できないだろうか。
 社民党()がいうWTOの改革、FTAなどの見直しの公約は評価できる。また、小規模家族農業を支援するという公約も評価できる。しかし、その一方で支援の対象を「販売農家」に限定している。「販売農家」の独自な定義があるなら示してほしい。農業関係者の常識では、大部分の小規模農家は、いわゆる「販売農家」ではない。だから支援の対象にならなくなる。そうなら評価できない。
 国民新党()は食料安全保障のために米の価格保障制度を主張している。また米粉米や飼料米の生産者に対する所得補償制度も公約している。これらは評価できるが、その一方で株式会社の農業への参入を認めよ、と主張している。これらの詳細は不明な部分が少なくない。もう少し詳しい説明が必要だろう。

 以上で各党の公約を具体的にみてきたが、これらが自給率の向上にどう結びつくのか不明な点が多い。だから自給率向上が最重要だと言っても熱気が伝わってこない。それに密接にかかわる輸入自由化政策と構造政策は、各党でそれぞれ独自な政策を公約している。その違いは公約の中の価格・所得補償政策の違いをみればよく分かる。次号で見てみよう。


(前回 自民党農政と民主党農政は瓜二つ

(2009.08.07)