はじめに輸入米の中止だが、これまでここは聖域だった。ここに手をつけることは禁じ手だった。日米同盟を損なうという理由である。そうだろうか。
アメリカの米の対日輸出額は1.74億ドルにすぎない。アメリカの輸出総額は1.83兆ドルだから、その0.01%にもならない。輸入を中止したからといって、アメリカは同盟関係を損なうほどの重大な問題とは考えないだろう。まして日本は政権が交代して、新しい首相は「対等な日米関係」といっているし、食糧自給率の向上は、新しい政府の重要な国家戦略なのである。
民主党農政に不安を抱いている農業者は少なくないが、その主な点は輸入自由化をいま以上に進めるのではないかという不安である。この不安を取り除くための、いちばん分かり易いことは、輸入米の中止である。せめて、米の輸入はいま以上に増やさない、と具体的かつ明確に、政府の責任者が政治生命をかけて発言すれば、不安の多くは解消されるだろう。
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次に備蓄である。これまでの、いわゆる備蓄には多くの問題があった。まず備蓄方式が回転備蓄だったことである。つまり、備蓄米は主食米や加工用として次々に売り、売れた分だけ新米で補充するという方式だった。これは備蓄というよりも在庫調整というべきものだった。だから、備蓄米が多くなると米価が下がった。
新しい民主党農政は、これを改めて棚上げ方式にすることにした。つまり、備蓄米はよほどの米不足にならない限り主食用や加工用としては売らない。この方式こそ食糧不足に備えた備蓄だ。その後、古米になったものも主食用や加工用としては売らず、米粉用などの米として売る、というものである。だから、備蓄米が多くなっても主食米の米価は下がらなくなる。しかも、備蓄量はいままでより大量に増やして300万トンにするという。政権交代の風元はここにもあっただろう。
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以上のように食糧自給率を上げるには、まず米の輸入を止めることである。輸入米を全てそのまま海外援助用にしても同じことである。それに加えて、備蓄を3年間の棚上げ方式にすれば、米は177万トン不足する。減反を緩和するしかない。食糧自給率は46%にまで上がる。こうした自給率向上の農政を続けていけば、やがて減反派と非減反派という対立は解消するだろう。
こうした明るい農業、農村の将来像を、大胆に示してほしいものである。その第1歩として、輸入米の中止あるいは海外援助用での活用と、300万トンの棚上げ備蓄の着実な実行を期待したい。
(前回 直接所得補償は低米価への準備か)
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