全ての関税の撤廃を目ざしたFTAなどの自由貿易で、わが国が最も不利になるのは、農業部門であり、ことに米である。自由貿易になると、わが国の米を中心にした農業は縮小し、食糧自給率はいっそう急速に下がり、食糧の安全保障が脅かされることが、最も深刻な懸念なのである。
攻めの農政で、この懸念を一掃できるだろうか。
日本の米は旨いし、目覚しく経済が発展している東アジアは、今後、富裕層が急速に増えるから、価格が高くても、日本の旨い米を食べるだろう、だから積極的に、攻撃的に売り込もうというのである。
この政策は、20年前から言われ続けてきた。手詰まりになる度にでてくる政策である。そして、失敗を重ねてきた。
図は、近年の米の輸出量の推移を示したものである。最近は2万トン程度だから、生産量の約850万トンの0.24%程度に過ぎない。しかも、最近増えているとは言えない。せいぜい横ばいである。
一方、最近の農産物輸出の内訳をみてみよう。農産物の全輸出金額は2637億円で、そのうち米の輸出金額は、援助米を除くと5.45億円に過ぎない。実に0.21%でしかない。
これが、20年前から農政の柱の1つにしてきた、攻めの農政の、実際の、目を覆いたくなるように無惨な、淋しい成果である。
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ここで言いたいことは、だから米の輸出振興のための政策を止めよ、ということではない。そうではなくて、攻めの農政などと言って、農政の主要な柱にするほどに、成果が期待できるような政策ではないことを指摘したいのである。
攻めの農政の、これまでの失敗に目をつむり、今後の農産物の輸入自由化のための目くらましにしてはならない。
自由貿易にしても、攻めの農政を進めれば自給率を下げることにはならない、などと考えて、いままでの失敗に目を外らしてはならない。
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こうした夢も希望もない幻を、いつまでも追い求めるのではなく、過去に失敗を重ねてきた現実を直視し、幻影から決別しなければならない。
そうして、地道に米粉米や飼料米の需要拡大の支援に、力を集中すべきだろう。
(前回 低米価政策への農政転換は稲作の破滅)
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