コラム

「正義派の農政論」

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【森島 賢】
大日本協同組合主義共和国連邦

 新年おめでとうございます。
 新しい年を迎え、改めて、迷走するわが国が、これから向かうべき国家像を大胆に描いてみよう。
 昨年は暮れにかけて TPPに参加するかどうか という議論が活発に行われた。今年も新年から、TPPへの参加は平成の開国だ、と首相が意気込んだり、国のかたちを変えるほどの改革だ、とマスコミが囃し立てている。
 そこで、今後、わが国が向かうべき国家像を考えてみよう。それは、市場原理主義に基づくTPPに参加する方向ではない。

 表題は、筆者が、わが国の国家像にすべきだ、と考えている名前である。説明しよう。
 初めの大日本の大の字は、それ程の深い意味はない。隣の韓国が公式には大韓民国というし、英国がかつて大英帝国と言ったのと同じで、国家としての矜持を表す、という程度のものである。領土を拡大しよう、などという考えは、毛頭ない。
 次の協同組合主義だが、これはこの国家像の中核的な部分なので、項を改めてすぐ後で説明する。
 その次の共和国は、全ての国民が主権を持つ民主主義の国家という意味で、協同組合主義と重複するかもしれない。だが、協同組合が単なる経済団体ではなく、社会や政治の基礎単位になることを強調したいために、敢えて加えた。
 最後の連邦は、主権者の声が届きにくい、したがって、腐敗しやすい官僚的、中央集権的な単一国家ではなく、数百の自治権の強い地方政府の連合体、という意味である。この点で、これまでの社会主義とは距離がある。
 名前の講釈が長くなったが、言いたいことは、協同組合主義に基づく国家が、資本主義に続き、社会主義を超える国家の形態であり、それをわが国は明確に認識して、そこに向かおうということである。

 いま、わが国の社会は混乱をきわめ、人心は荒廃の極にある。それをもたらした根底には資本主義がある。目先の私利私欲だけを追求し、社会的な責任と倫理を放棄した資本主義がある。
 いまや、資本主義に社会の安定や、人間性を回復させる力はない。それゆえ、資本主義の改良に期待するのではなく、それに代わって社会を再構成する新しい原理を追及しなければならない。
 それが協同組合主義である。それは、経済活動の1つの形にとどまらない。社会の中で人と人を結びつける基本的な形である。

 協同組合の第1の特徴は、その目的にある。これは農協が日々実践していることだが、その目的は、社会的責任を果たすという倫理的価値の追求である。
 協同組合の第2の特徴は、これも農協をみればすぐ分かるように、ものごとを決めるときには、原則として全員が合意して決める。賛成しない人がいるときは、徹夜してでもその人の心のひだまで皆が理解し、妥協案を作って、全員の合意をとる。
 多数決は、次善の策で、そのときは、1人1人が平等に1票の投票権を持つ。

 これに対して資本主義は、この2つの特徴を、ともに持っていない。このことが、基本的な特徴である。
 目的は、金銭的利益の追求が唯1つのもので、社会的倫理観を持っていない。
 そして、ものごとは、1株が1票の投票権で、多数決で決める。したがって、大株主が強い決定権を持っている。
 つまり、大株主である資本家の私的な金銭的利益を、ひたすらに追求することが唯1つの目的になる。
 それゆえ、格差が拡大しても、医療や教育が破壊されても、人心が荒廃しても、さらに、資源が枯渇しても、環境が悪化しても意に介さない。
 個々の資本家が、どんなに高潔な人格者でも、資本は、そうした悪徳に満ちている。

 このように、資本主義は協同組合の対極にある。筆者がいう協同組合主義とは、協同組合の活動を流通分野にとどめるのではなく、生産活動にも広げ、さらに、社会活動の全体に広げよう、というものである。
 しかし、そこに到るまでには、いくつかの困難がある。最大の困難は、次に述べる私権の制約である。

 資本家は、自分が多額の金額を出して生産手段を買ったのだから、その所有権は自分が持っていると考える。生産物も自分のものだと考える。
 古今東西を通じて、生産手段の所有者は、生産を指揮し、生産した物を占有する。資本主義も例外ではなく、生産手段を私的に所有している資本家が生産を支配し、生産物を占有する。そして利潤を独占する。ここに諸悪の根源がある。

 しかし、所有権を持っているとはいっても、実際にはさまざまな社会的な制約が課せられていて、教科書に書いてあるような、絶対的な支配権を持っているわけではない。
 ここで主張したいことは、生産手段の私的所有権に対する社会的制約を強め、すこしづつ協同組合による管理へ移そう、というものである。そうして、社会的正義を実現しよう、というものである。その極限に協同組合主義共和国がある。
 農協は、農村での中核的な組織として、この共和国に最も近い位置にいる。

(前回 選別政策で迷走する民主党農政

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(2011.01.05)