農業再生本部、公式には、食と農林漁業の再生推進本部は、TPP、つまり関税ゼロの完全自由化のもとで、食糧自給率を向上させる政策を作るための組織だという。
そんな政策が作れるのだろうか。そんなことが出来れば、とうの昔に作って、実施していただろう。
関税が下がれば、輸入が増えるのは、子供でも分かる。まして、TPPに参加して関税がゼロになれば、輸入は激増するだろう。自給率は向上するどころか、劇的に下がるだろう。
農水省は、自給率が13%にまで下がると試算している。まさに食糧安保を危機的な状態に陥れる。これが残念ながら常識だろう。
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政府は、こうした非常識なことを目的にした組織を作っている。どんな秘策があるのだろうか。
秘策の中心は、米の輸出のようだ。日本の米は旨いから、少しくらい高価でも、東南アジアの富裕層に売れるだろう、というのである。そうすれば、自給率が上がる、という訳だ。
いくつかの問題がある。
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まず第1に、想定しているのは、中国の富裕層だろう。だが、中国はアメリカ主導のTPPに参加すことを、全く考えていない。
つまり、中国への米の輸出は、TPPと関係ない。日本がTPPに参加したからといって、中国へ輸出しやすくなる訳ではない。
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第2に、「少しくらい高価でも」というが、どうだろうか。いま、北京の米卸売価格は2719円(以下、すべて玄米60kgあたり)である。
いっぽう、全農が発表している米価は1万2000円〜1万5000円である。つまり北京の約5倍である。これは、「少し高価」ではない。
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第3に、日本の米は旨いというが、そうだろうか。
日本人が旨いという米はジャポニカ米である。世界の中でジャポニカ米が旨い人は、約2割の少数派である。大多数の人は、インディカ米の方が旨いと思っている。
このように、日本の米は旨い、というのは一人よがりなのである。
筆者は、中国への米の輸出に反対しているわけではない。そんな政策しか考えつかない、という農政の貧困を憂えているのである。
(前回 大日本協同組合主義共和国連邦)
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