TPPは、アメリカが主導して、いま世界経済を牽引しているアジアの経済発展の果実を横取りすることにある。
もち論、アメリカはアジアではないし、今後の世界経済の中心でもない。世界経済の中心はアメリカから中国に代わろうとしている。
それゆえ、アメリカは焦っているとも言える。
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表は、日本、中国、アメリカのGDPを示したものである。
中国の台頭は目覚しいものがある。最近、話題になったように、中国は日本を追い抜いて、世界第2位の経済大国になった。
この表から分かるように、13年後にはアメリカも追い抜いて、世界第1位になるだろう。そして、アメリカに替わって世界の中心になるだろう。
こうした中国を軸にしたアジアの発展に貢献することが、アジアの一員である日本の重要な役割ではないだろうか。
それなのに、日本社会のアメリカ化、そして、その結果としての経済の停滞ぶりは、目を覆いたくなる。
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なぜ、アメリカ主導のTPPへの参加なのか。答えは、価値観の共有だという。では、どんな価値観か。
それは、弱肉強食の市場原理主義であり、各国の多様な農業の共存を認めない価値観ではないか。だから、農産物を含む全ての関税をゼロすることを、重要な理念にしているのである。
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このような理念に対して、中国やインドは全く関心を示していないし、韓国も同じように無関心である。
韓国はアメリカとの2国間でFTAを結べば充分だ、と考えている。
日本も2国間の経済協力でよいのではないか。これまでの日本の経済協力は、全て食糧主権を認め合った協定である。
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このように、アジアの主要国がTPPに関心を示していない中で、日本はTPPに参加して、どのようにアジアの経済発展に貢献しようというのだろうか。
TPPに性急に参加することで、またしても、アジアの中での孤立を深めようとしているのではないか。
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そうではなくて、市場原理主義と決別し、互いに食糧主権を認めあいながら、また、日本とアジア、日本とアメリカの2つの距離感を慎重に勘案しながら、アジアの発展への貢献を計らねばならないだろう。
(前回 TPPに参加して自給率を上げるのは無理だ)
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