2006年に、当時の政府は、日豪EPAが結ばれることを仮定し、関税が撤廃された場合の影響を試算した。それによれば、日本の小麦と砂糖はほとんど全滅、乳製品と牛肉は半減する、としている。
また、そのころ国会では、衆議院でも参議院でも、日豪EPA交渉について、農産物のなかの重要品目が関税撤廃の対象から除外されなければ交渉を中断せよ、と全会一致で決議した。
つまり、国会も日豪EPAが日本農業に及ぼす影響が甚大であることを予想し、強い懸念を表明した。
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なぜ、日本は、そうした懸念があるのに、オーストラリアとEPAを結ぼうとするのだろうか。
それは、資源の安定輸入だという。だが、それはオーストラリアの善意に期待することでしかない。特別に輸出義務を負わせる訳ではない。仮に輸出義務を負わせたとしても、激しい資源争奪戦のなかでは、簡単に反古にされるだろう。
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また、自動車などの関税を撤廃して、輸出を増やそうというのである。だが、それは安易に過ぎはしないか。
関税を下げてもらって輸出を増やすなどということは、優れた経営者でなくても誰でもできる。優れた経営者なら、少しくらい価格が高くても、喜んで買ってくれるような良い物を作ることに、もっと努力するだろう。
実際に、これまで多くの経営者は、そうした物作りに励み、立派な物と優れた経営を作り、日本の経済発展に貢献してきた。
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いまのような、安易な経営者の目先の利益のために、日豪EPAを結んで、日本農業に甚大な影響を及ぼしていいのだろうか。
ことに、相手のオーストラリアは農産物の輸出大国で農産物の貿易自由化の急先鋒である。
日本とオーストラリアとでは、農業がおかれている状況がまったく違う。
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農水省の資料によれば、オーストラリアの農業経営の規模は、日本の1881倍で、隔絶した違いがある。だから、穀物や酪農など機械化農業の生産コストは、きわめて小さい。だから、残念だが、日本が競争して勝てる相手ではない。
それは、オーストラリアがこれまで努力を重ねて、規模を拡大したからではない。南北アメリカと同じように新大陸で、だから、もともと大規模だったのである。
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オーストラリア大陸や南北アメリカ大陸は、15世紀から、ヨーロッパの人たちが新しく発見し、そこへ移住し、それまでいた原住民の土地を奪い、規模を拡大したのである
だから、新大陸諸国の農業経営規模は、当初から大きく、それゆえ、生産コストが小さく、輸出大国になり、農産物の貿易自由化を強く主張するのである。
日本などアジア農業とは全く違うし、ヨーロッパ農業とも違う独自な農業を営んでいるのである。
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このように、世界の各国は歴史的、風土的条件が違った中で、それぞれ違った多様な農業を営んでいる。このことを互いに認めあい、尊重しないのなら、国会決議でいうように、交渉を中断するしかない。
ここで安易に妥協すれば、劣勢のまま一挙に本格的なTPP交渉に雪崩れ込むことになり、深い悔いを後世に残すことになるだろう。
(前回 農業に疎い民主党)
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