日本のエネルギー自給率は4%である。ちなみに、食糧自給率は40%で、世界の主要国の中で最低だが、それと比べても桁違いに低い。
だが、以前から低かったわけではない。高度経済成長が始まった1960年のエネルギー自給率は57%だった。また、その時の食糧自給率は79%だった。
つまり、50年前はエネルギー自給率も食糧自給率も極端に低かったわけではない。その後の経済発展の中で、政治が安易に自給率を低めたのである。しかも、広島、長崎を忘れたかのように、危険な原子力に依存してきた。
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ドイツの自然エネルギー発電をみてみよう。ドイツはチェルノブイリ事故を、最も深刻に受け止めた国の1つである。
付表は日本とドイツの発電のエネルギー源の割合を示したものである。
ここで注目したいのは、ドイツは再生可能エネルギーの利用が多いことである。日本は10.5%だが、ドイツは15.9%である。ことに風力の利用が多い。日本は0.2%に過ぎないが、ドイツは6.4%である。
ドイツでは、再生可能エネルギーを電力会社に買い取らせる制度があって、これが後押ししている。
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ドイツに出来て、日本に出来ない理由はない。
日本には、ドイツのように風力だけでなく、太陽光、水力、地熱、植物起源のエネルギーなど、さまざまな自然エネルギーが、全国の農村に未利用のままで大量に眠っている。
自然エネルギーなので、かりに事故が起きても原発事故のように有害物を撒き散らすことはない。しかも全国に分散していて、それぞれが小規模なので、万一の事故のばあいでも影響は極限される。
エネルギーの枯渇が危ぶまれているいま、また炭酸ガスによる地球温暖化が深刻な影響を及ぼそうとしているいまこそ、全国の農村を基点にし、自然エネルギーを利用した新エネルギー産業を興すときである。
こうした産業が、今後の日本経済を牽引する最先端の基幹産業になるだろう。
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福島に、こうした自然エネルギーによる発電事業の先導的な地域になってもらおうではないか。日本経済の新しい発展の先駆的な担い手になってもらおう。そうして、こんどの地震や津波の被災地だけでなく、全国の各地に広めてもらおう。
これまでのように、1か所で大量に発電するのではなく、少量づつ各地で発電することになる。だから、スマートグリッド(最適化電力網)などで融通しあうことも必要になるだろう。余ったら仙台や東京や大阪などの大都市へ送ってもらおう。
農村の人たちは、発電事業に参加するだけでなく、発電に関連する最先端の技術を駆使した事業に参加することもできる。
このようにすれば、福島だけでなく、全国の農村の人たちの明日へ向かった明るい希望と、みどり豊かな農村が再び蘇るだろう。
これは、政治が日本の未来を見据えて主導し、全面的に支援すべき国家事業である。
(前回 TPPは食の安全を脅かす)
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