先ず第1に注目されるのは、TPP参加に対して圧倒的に多くの市町村長が反対していることである。反対が38%に達しているのに対して、賛成は僅か8%に過ぎなかった。
しかし、約半数である54%の市町村長が態度を決めかねている。この点も見逃せない。
態度を決めかねている市町村長を除くと、反対が83%で賛成が17%になる。つまり、6人のうち5人が反対で1人が賛成になる。
◆農業と商工業の対立
態度を決めかねているなかで、多くの市町村長は、TPPは農業に悪い影響があると考えている(56%)。農業に良い影響があると考えている市町村長は1人もいなかった。TPPに参加して、日本の農産物を海外に売り込もう、という一部の評論家に賛成する意見は皆無だったようだ。
だが、その一方で、工業や商業には良い影響がある、と考えている市町村長が少なくない(27%と14%)。
TPP参加問題には、農業と商工業との利害の対立がある、と考えているのだろう。前外相が言ったように、TPPに参加しないことは、わずか1.5%の第1次産業のために、第2次産業と第3次産業が犠牲になることを意味する、と考えているように思える。
◆農村と都市の対立
それは、本紙で地域別に詳しく示すように、農村と都市の対立のように見える。
北海道、東北、九州・沖縄などの農村部では、農業にも商工業にも、つまり、全産業に悪い影響があると考えているが、関東、中部、近畿、中国、四国では、農業には悪い影響があるが、商工業に良い影響がある、と考えている市町村長が少なくない。
こうした対立を残したまま、TPP参加を決めることは、対立を深め、将来に大きな禍根を残すことになるだろう。
◆市町村長の最大多数派は「どちらでもない」派
そこで、過半数の市町村長は、TPP参加に賛成でもなく、反対でもなく、「どちらでもない」と回答している。態度を決めかねているのだろう。
農業と商工業の間の利害の対立、農村と都市の間の利害の対立が、深刻になると考えて困惑しているのだろう。
◆政府は説得できていない
政府は、農業とTPPを両立させる、と言っている。つまり、農業と商工業、農村と都市は対立させない、両立させる、と言っている。前外相のように、対立したままで農業を犠牲にする、と考えているわけではない。
だが、多くの市町村長は両立できない、と考えている。政府と市町村長の考えが、くい違っているのである。その理由は、政府の説明に説得力がないからである。両立できるなどと、もともと無理なことを言っているからである。
◆拙速なTPP参加決定は止めよ
こうした中で、政府はTPP参加を決めようとしている。TPP参加を検討する政府の会合は、東日本大震災で中断していたが、12日に再開した。
以前、首相は6月までにTPP参加・不参加を決める、といっていた。しかし、最近になって、期限を先送りするといっている。だが、油断はできない。
検討が不十分のまま、拙速に重要な決定をすることは、首相の得意技である。警戒しなければならない。
(前回 原発は信玄に学べ)
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