いままで政府は、市場に出回っている食品は安全だ、といってきた。だが、放射能で汚染された牛肉が、実際に市場に出回っていた。政府への信頼は地に堕ちた。
いわゆる専門家は、基準値を超えた放射能を帯びた食品を食べても安全だ、と今でもいっている。まるで原発の安全性を主張しているようで、専門家への不信もつのるばかりだ。
いったい何を信頼すればいいのか。いっそのこと牛肉は食べないほうがいい、と考える人も多くなっている。風評被害の根源はここにある。
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政府も、いわゆる専門家も、牛肉が汚染されたのは、牛が汚染された稲藁を食べたからだ、という。まさか、牛が「自己責任」で勝手に汚染された稲藁を食べた、と考えているのではあるまい。誰が稲藁を汚染したのか。その責任については、何もいわない。
いうまでもなく、東電が放射性物質を撒き散らしたのである。政府がそうした危険を東電に許したのである。そして、今でも撒き散らし続けている。
このことに目をつむり、どのようにして汚染された稲藁を牛が食べないようにするか、汚染された牛肉を人が食べないようにするか、という点にだけ注意を向けようとしている。だから国民の不信はつのるばかりだ。
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政府の当面の対策は、全頭検査と買取りである。だが、その具体的な内容は決めていない。またしても、実行力のない死に体の内閣が、いつ終わるとも知れない議論を延々と続けるのだろうか。
こうした中で、牛は餌を食べつづけ、水を飲みつづけている。そして、農家は生活をしつづけている。もしも、国産牛肉よりも、輸入牛肉の方が安全と考えるようになったら、どうなるのだろうか。いま、日本の牛肉生産は重大な危機の中にある。
政府は、一刻も早く具体的な対策を決め、直ちに実行しなければならない。
(前回 全頭検査で牛肉の安全をはかれ)
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