いま、コメの経済は混沌とした状況にある。そうした中で、先物取引が始まった。農協は、組織をあげて反対したが、それを押し切って政府は認可した。
米価は下げ基調を続けている。米価が下がっても、昨年から始まった戸別所得補償制度で、売り手である農家の所得が補償されるからといって、買い手側は強気で値下げを要求する。
その結果、たとえば、栃木産のコシヒカリをみると、一昨年産米は平均1万4235円だったが、昨年産は、先々月には1万2512円に下がっている。1723円、つまり12%という大幅な下落である。
米価が、今後も下がるのではないか、という不安の中で、政府は米価の乱高下を招く先物取引を認めてしまった。
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こうした状況に加えて、原発事故の影響が懸念されている。
例年なら、いまごろ、消費者は新米を待ちかねているのだが、今年は放射能汚染の不安があるので、新米よりも、放射能汚染の不安のない、昨年産の古米のほうが、売れ行きがいいという。
先物市場の「価格調整表」では、新米のほうが古米よりも1500円高いことを想定しているが、実際には、この差は小さくなるだろう。不安な新米のほうが安くなるかも知れない。もしも、そうなれば、瑞穂の国の歴史が始まって以来のことになるだろう。混乱の結果、「価格調整表」は、さっそく修正せざるを得なくなるに違いない。
そうした異常な混乱の中で、政府は先物取引を認め、混乱に拍車をかけようとしている。
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いままでのところ、新米の売れ行き不振は、風評被害にとどまっている。だが、もしも仮に、実際に新米から放射能が検出されたとすれば実害になる。その瞬間に、米価は先物市場で暴落するだろう。
検出されなくても、いま行おうとしているコメの放射能検査を、消費者が完全な検査でないと考え、信用しなければ、風評被害は、いまよりも、さらに広範にひろがるだろう。
そうした不安の中で、政府は先物取引を認め、混迷を拡大しようとしている。
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こうした事態を収束するには、政府が完全な検査をするしかない。
しかし、完全な検査はあり得ない。だから、風評被害はなくならない。風評被害をなくすには、原発からの放射能の流出を、将来にわたって止めるために、政府が断固とした姿勢を示すことである。そして、消費者からの信頼を回復することである。
その上で、政府がより完全に近い検査をするしかない。そうして、その情報を迅速に公開することである。
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これらの点からみても、先物市場は、コメをめぐる混乱に拍車をかけ、混迷を拡大するだろう。その責任は先物市場が負うべきだ、などと政治が逃げてはならない。責任は、先物市場を認めた政府にある。混乱を収拾するには、早急に先物市場を廃止するしかない。
いまは、2年間の試験期間である。遅くとも試験期間が終わる2年後には、廃止すべきである。それが、日本農業に責任を持つ農協の全組合員の要求である。そして、食糧安保をねがう大多数の国民の要求である。
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(前回 牛肉の出荷制限は弥縫策)
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