筆者は米粉の普及こそが農業再生の本道だと考えている。救世主だ、とさえ思っている。
300万トンの目標が達成されれば、減反は大幅に緩和できる。その上、いま毎年輸入しているMA米を止めれば、それを補うために国内で77万トン増産しなければならなくなる。この77万トンを加えれば377万トンになる。減反などしてはいられない。農業者にお願いして、増産してもらうしかない。日本の農業に、何十年ぶりかで活気が蘇えるに違いない。
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しかし、先月に発表された、いわゆる農業再生計画は、行動計画と銘打っているが、米粉の文字はどこにもない。だから会長代理は反対したのだろう。そして、できもしない大規模化や輸出産業化、矮小な6次産業化などという空念仏を唱えているだけだ。
再生計画では、MA米についても頬かむりして、何もいっていない。まるで日本は米を輸入していないかのようだ。その上で、輸出産業化や再生をいっている。何と空しいことか。
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政権交代した当初の農政は、食料自給率の向上を大目的に掲げ、この目的に貢献する全ての農家を、小規模農家を含め、高齢者を含めて、分けへだてなく農政の対象にする、といっていた。そうして生産費を補償する戸別所得補償制度を創設した。国民は喝采した。
米粉の普及は、食料自給率向上のためのもっとも直接的な、そしてもっとも有力な政策として位置づけた。輸入小麦に代えて、米でパンやメンを作って食べよう、そして、皆で食料自給率を上げようという、わかり易い政策だった。米を輸出しよう、などという出来もしない政策には見向きもしなかった。
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だが、その後、最近までこの政策は放置されてきた。そしてこんどの副大臣の米粉300万トン宣言である。民主党農政が初心に戻ろうとしているのだろう。期待したい。TPPにうつつを抜かしている時ではない。これこそが農業再生の切り札である。
このことを会長代理を含めて、政府、与党の全員が初心に戻って再認識すれば、TPPで失いつつある農村の支持を回復できるかもしれない。この政策はTPPと両立しない。だから、そのためにもTPP参加は断念しなければならない。
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この米粉普及の政策には、それほど多くの助成金は要らない。計算してみよう。
米の輸入を止める分を含めると、前に述べたように377万トンである。助成単価をいまの反当たり8万円とすれば、反当たり収量が0.5トンとして、助成金の総額は6000億円に過ぎない。
この金額で、農業が再生でき、全ての農業者に明るい笑顔が戻り、さらに首相のいう美しい農村を守り抜くことができ、安定した社会を再構築できる。だから決して大量の金額ではない。
会長代理は先月、財界寄りの学者や官僚が書いた再生計画を捨て、白紙に戻し、初心にかえって副大臣の政策を真摯に検討すべきだろう。
(前回 TPP反対の運動は、これからが本番だ)
(前々回 TPP問題で農協に悪態をついた元内閣官房長官)
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