コラム

「正義派の農政論」

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【森島 賢】
筒井副大臣の米粉300万トン宣言

 昨日、筒井信隆農水副大臣(民、衆、新潟6)が政府・与党の会合で、米粉用米の生産目標を300万トンにする、という政策を早急に検討したい、と発言した。そのように今朝の日本農業新聞が伝えている。
 これに対して桜井充政調会長代理(民、参、宮城)が反対したようだ。これは、どうでもいい。とりあえず無視しよう。
 2年前の政権交代の直後、当時、農水大臣だった赤松広隆議員(民、衆、愛知5)が、米粉100万トンの大目標をブチ上げたことがあった。
 まだ政権交代の熱気が燃え上がっていたころで、民主党農政に対する新鮮な、そして大きな期待が国民の中に沸き起こった。コンビニのローソンなどは、米粉パンの大々的な売り出しキャンペーンをした。
 そうした全国民的な期待に応えて、元大臣は米粉に対する手厚い助成制度も創った。そして、米粉が大幅に増えた。
 だが、2年経ったいま、熱気と期待が萎もうとしている。そうした中での副大臣の宣言である。久しぶりの明るいニュースである。

 筆者は米粉の普及こそが農業再生の本道だと考えている。救世主だ、とさえ思っている。
 300万トンの目標が達成されれば、減反は大幅に緩和できる。その上、いま毎年輸入しているMA米を止めれば、それを補うために国内で77万トン増産しなければならなくなる。この77万トンを加えれば377万トンになる。減反などしてはいられない。農業者にお願いして、増産してもらうしかない。日本の農業に、何十年ぶりかで活気が蘇えるに違いない。

 しかし、先月に発表された、いわゆる農業再生計画は、行動計画と銘打っているが、米粉の文字はどこにもない。だから会長代理は反対したのだろう。そして、できもしない大規模化や輸出産業化、矮小な6次産業化などという空念仏を唱えているだけだ。
 再生計画では、MA米についても頬かむりして、何もいっていない。まるで日本は米を輸入していないかのようだ。その上で、輸出産業化や再生をいっている。何と空しいことか。

 政権交代した当初の農政は、食料自給率の向上を大目的に掲げ、この目的に貢献する全ての農家を、小規模農家を含め、高齢者を含めて、分けへだてなく農政の対象にする、といっていた。そうして生産費を補償する戸別所得補償制度を創設した。国民は喝采した。
 米粉の普及は、食料自給率向上のためのもっとも直接的な、そしてもっとも有力な政策として位置づけた。輸入小麦に代えて、米でパンやメンを作って食べよう、そして、皆で食料自給率を上げようという、わかり易い政策だった。米を輸出しよう、などという出来もしない政策には見向きもしなかった。

 だが、その後、最近までこの政策は放置されてきた。そしてこんどの副大臣の米粉300万トン宣言である。民主党農政が初心に戻ろうとしているのだろう。期待したい。TPPにうつつを抜かしている時ではない。これこそが農業再生の切り札である。
 このことを会長代理を含めて、政府、与党の全員が初心に戻って再認識すれば、TPPで失いつつある農村の支持を回復できるかもしれない。この政策はTPPと両立しない。だから、そのためにもTPP参加は断念しなければならない。

 この米粉普及の政策には、それほど多くの助成金は要らない。計算してみよう。
 米の輸入を止める分を含めると、前に述べたように377万トンである。助成単価をいまの反当たり8万円とすれば、反当たり収量が0.5トンとして、助成金の総額は6000億円に過ぎない。
 この金額で、農業が再生でき、全ての農業者に明るい笑顔が戻り、さらに首相のいう美しい農村を守り抜くことができ、安定した社会を再構築できる。だから決して大量の金額ではない。
 会長代理は先月、財界寄りの学者や官僚が書いた再生計画を捨て、白紙に戻し、初心にかえって副大臣の政策を真摯に検討すべきだろう。


(前回 TPP反対の運動は、これからが本番だ

(前々回 TPP問題で農協に悪態をついた元内閣官房長官


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(2011.11.17)