政府の首脳部は、TPPに参加したいようだ。TPP問題は、昨年にひき続いて、今年も農政の中心課題になる。今年の後半になれば、アメリカは日本のTPP参加を認めるかどうか、の結論を出すようだ。認めれば、政府は、さっそく国内の説得を始めるだろう。
TPPに参加すれば、輸入農産物が大量に入る。その結果、農業は壊滅し、食糧自給率は下がり、食糧安保は危うくなる。それは火を見るよりも明らかだ。
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農業者や医師など、多くの国民が、TPP参加に反対しているのは、農業者や医師が困窮する、という理由だけではない。食糧自給率が下がって、食糧安保が危うくなり、また、国民皆保健が崩壊して、国民の健康が脅かされるからである。
国民の食と健康を守る、という崇高な目的のために、現場の第一線にいる農業者や医師たちが、立ち上がったのである。
それだけではない。TPPは、これまで先人たちが培ってきた金融、保険、労働などの制度を壊し、日本の国の骨格を跡形もなく破壊する。だから、多くの国民が反対している。
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昨年10月の農業再生計画をみてみよう。これは、TPP参加を前提にしたものではない、といっていた。だが、その中身をみると、「高いレベルの経済連携と両立しうる持続可能な農林漁業を実現する」と書いてある。「高いレベルの経済連携」というのは、TPPの別名である。つまり、TPPと農業を両立させる計画だという。だが、TPPは関税ゼロが大原則である。関税ゼロで、日本農業との両立は出来ない。
また「自給率50%・・・を目指し・・・」とはいうが、具体策はない。
これでは、TPPに参加して、その結果、自給率が下がってもいい、と考えているとしか思えない。
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この再生計画には、3つの柱がある。
第1の柱は、経営規模の拡大である。だが、規模を拡大したからといって、自給率が上がるわけではない。むしろ、小規模農家に対して、農業を止めるように圧力をかけ、疎外することで、自給率が下がることが予想される。
規模の大小を問わず、自給率の向上に貢献する全ての農家を農政の対象にする、という民主党の初心を、全く忘れたようだ。
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第2の柱は、若い新規就農者への支援である。これも自給率向上には結びつかない。せいぜい自給率の低下をすこし遅らせる、という程度だろう。
しかも、この政策は、年齢の如何を問わず、全ての農業者を農政の対象にする、という2年前の政権公約に反している。この公約を信じた多くの農業者は、政権交替させたことを後悔するだろう。
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第3の柱は、いわゆる6次産業化である。これも自給率とは無関係で、加工・流通部門での競争を煽るだけだろう。
自給率問題は、野菜や果物を自給する問題ではない。コメなどの穀物の問題である。加工や流通部門での競争で効率化したからといって、コメの需要が増え、自給率が高まるわけではない。
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では、どうするか。
食糧自給率向上の大道は、国産米を増産して、輸入小麦や輸入飼料を減らすことである。そのためには、国産米を米粉にし、パンやメンにして、輸入小麦を減らすことと、国産米を飼料にして輸入飼料を減らすしかない。米粉米と飼料米の増産である。そこに農政の主力を注ぐべきである。
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新しい年を迎え、あらためて、食糧自給率向上の政策を農政の真正面に据えて、向き合わねばならない。TPP参加反対の運動も、この視点こそが国民から支持される視点である。
そうして、米粉米と飼料米の増産のための制度の充実を、具体的に計らねばならない。これこそが、農業再生の大道である。
(前回 TPP推進論の破綻とアメリカの焦り)
(前々回 TPPの世界史的位置)
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