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【明治大学野生の科学研究所所長】
中沢 新一 氏

 「今、若者の間で農業をめざし始める人が増えている。30年前には考えられなかったことだ」。こうした若者の「農業を見直す動き」は、藤本敏夫氏が発し続けたメッセージが確実に実を結んでいる結果だとして故人の功績を讃えた。

 千葉県鴨川市で農場を開き、「大地を守る会」を設立するなど、有機農法の実現と普及に尽力した藤本敏夫氏。平成14年7月に58歳の若さで亡くなったが、11月に没後10年を記念したイベントが催された。
 中沢氏はこのイベントで「今こそ農業の時代〜藤本敏夫氏から託された未来〜」をテーマに記念講演。藤本氏の思想や、現代の農村と日本が抱える課題などについて語った。
 現代の日本の若者の中に、農業回帰とも言える思想が出てきたことについて「高度経済成長という、米国のアジア獲得戦略に日本が巻き込まれた」ことで日本の共同体は破壊されたが、しかし日本人の内面にある「2000年以上、土に根ざして生きてきた、その精神性までは失われなかった」結果だと分析した。
 また、中国やソ連の農業改革が、「農民から土地を取り上げ、農業や地域の協同組合の思想を持たない、単なる農業労働者にしてしまった」ことで失敗したのだと解説。「農業とは、自然と人間が共生する産業。それは共同体を追求する運動だ」として、改めて藤本氏が提唱した有機農法の思想が普遍的であるかを述べ、これからも「“農”の営みを通じて人間と自然が有機的に融合する」という藤本氏の思想を追求していきたいと結び、故人を偲んだ。


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(2012.12.17)