◆加工用トマトの安定供給に貢献
トマトの低段密植・養液栽培は1970年代ごろから日本で独自に研究されてきた栽培方法。高設ベンチで苗を通常の2〜4倍ほど密集させて栽培し、低段の果実のみを年3〜4回収穫する方法で、従来の多段栽培に比べて作業の単純化、低コスト化、収量増などが実現できる。すでに一部では実用化されているが、主に従来の大玉トマト品種が用いられており、専用品種はなかった。
また、日本でのトマトの消費は生食用がほとんどなため、加熱用には輸入の缶詰などが用いられてており、国産の加熱用優良品種が求められていた。
これらの課題をうけて、農研機構とJA全農は2007年より低段密植・養液栽培用のクッキングトマトの共同研究を始め、このたび「すずこま」を育成した。
(写真)
果実をつけた「すずこま」
◆露地・ハウス栽培にも対応
「すずこま」は、果実が30〜40gと小さいため密植に最適で、1株あたり40個以上の果実をつけるので大幅に収量を増やせる。
また、自然に伸長が止まる「心止まり性」があるので手間のかかる芽かき作業が必要なく、果実の柄に節がない「ジョイントレス性」があるのでハサミを使わずにヘタなし収穫ができるなど、管理や作業の省力化が可能だ。
従来品に比べ色素リコペンの含有量が多いため濃い赤色となるが、糖度は低いので加熱調理に適している。
低段密植・養液栽培の専用品種として開発されたが、従来の露地やハウスでの栽培にも対応しており、JA全農では「すでにジュース用トマトなどを露地栽培している生産者にも使ってもらいたい」(営農・技術センター)と、加工用トマトの生産拡大へ期待を寄せる。
種子の一般販売は来秋の予定だが、JA全農では営農・技術センターと千葉大が共同で研究している「一段密集・養液栽培」の技術と組み合わせて普及させたい考えだ。
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