農政・農協ニュース

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遊休地を利用した先進的農業 JAはだの 農業協同組合研究会と現地交流

 農業協同組合研究会は現地シンポジウムをJAはだので8月29日に開いた。これに先立ち、午前中は現地視察を行った。

養液の中で栽培し鮮度を保つため根をとらずに収穫する JAはだの管内に、遊休地を利用して農業に新規参入した企業がある。
 水耕栽培で野菜を生産している(株)グランパの秦野ファームだ。JAはだの管内の遊休地を再生しようと地元不動産業者らが出資し、地権者から借りた農地に大手種苗メーカーが開発した施設を導入してはじめた。
 今年で3年めを迎えたファームは現在社員3人、パート33人で営む。3200坪の敷地には5棟の施設があり、育苗から出荷まで各工程に分けた作業で4〜5種類の野菜を生産している。
収穫間近の野菜 最初はデパ地下やスーパーなどでパック販売していたが、収益を確保するためパック処理不要な業務用に切り替え、現在は主に東京ディズニーランドと出荷契約し館内のレストランでサラダやサンドイッチに使われている。
 水耕栽培のメリットの1つは効率的な生産ができることだ。施設内の設備によって風や日光、温度調整ができるため、天候などの影響を受けず1年中安定した価格で野菜を提供できる。
 もうひとつは誰でも作業しやすい環境下にあることだ。作業工程がシステム化されていることで農業をやったことがない人でも簡単に作業することができる。肉体的にも畑仕事と違って負担が少ないため高齢者や障害者でも作業がしやすい。
阿部隆昭社長 しかし課題もある。水耕栽培の野菜は露地栽培に比べてコストがかかる。いかに生産サイクルの回転率を上げ、栽培品目を増やすかが今後の課題だとしている。また栽培に必要な養液も高い。リサイクルすれば養液の代わりとなり、再び農業に還元できるものがないか、考えたいとしている。
 「農業ほど楽しいものはない」という同ファームの阿部隆昭社長は一般の人も農業に参加できる仕組みだとして、先進的農業の拡大につながっていけばと願いを話した。
 
 


(写真)
上:養液の中で栽培し鮮度を保つため根をとらずに収穫する
中:収穫間近の野菜
下:阿部隆昭社長


 
女性の力で築いたそば処で

地域を元気に


 昼食で訪れたのは地元の女性達がきりもりするふるさと伝承館内にあるそば処「東雲(しののめ)」。オープンから10年になる。
のどかな場所に位置する「ふるさと伝承館」 石臼でひいたそば粉を手打ちし、丹沢の伏流水でさらしたそばが自慢だ。この日昼食に出されたのは地元の食材がたっぷり使われた「しののめ御膳」。メインの「二八そば」に旬の野菜の天ぷら、自家製の漬け物、シソのゆかりごはん、ゴーヤの煮付け、秦野産のナシがついた。
 地元農産物の直売所を併設していることもあって、土日は多いときで160人、平日でも80人がそばを味わいにやってくるという。
地元の旬の食材たっぷりの「しののめ御膳」 「東雲」の代表を務めるのは山田洋子さん。農家に生まれ育ち、社会人となってからは百貨店での接客や商工会議所に勤め、その後料理教室やJAの料理指導の講師を行ってきた経歴があり、現在はJAの理事も務める。
 山田さんは自ら指揮をとり店の立ち上げに奮闘してきた道のりの苦労を話してくれた。
 
◆地元ならではの食材を提供したい

「東雲」の代表を務める山田洋子さん 秦野のそばが名物になったのはかつて特産品だったたばこの後作として作られていたのがきっかけ。しかし昭和59年にたばこ栽培がなくなると同時にそば作りも減り、手打ちそばを出す店が少なくなった。これを復活させようと仲間を募集することからスタートした。
 店を始めるにはまず従業員の技術習得が課題だった。山田さんは手打ちそばの指導者として集まったメンバーを育てた。主婦が多いため都合が合わない人には自宅で個人指導を行って技術の足並みを揃えた。
 従業員の指導だけでなく店づくりでも苦労した。立ち上げ当初、調理場にあったのはそば打ち道具3台に洗い場と冷蔵庫だけだったという。古い布団を打ち直して座布団を作り、せいろやはしを揃えることから店作りは始まった。
 他にもそばに合うつゆ作りに試行錯誤するなどして、そばの味と店を築いてきた。
 現在使用するそば粉は全て秦野産のものではまかないきれないため、いちばん二八そばに適していると感じた北海道のそば粉も使用している。ただし二八そばに2割使用する小麦は秦野でとれたものだ。
 「地元の食材にふれてもらおうとその日使った食材の説明書きをテーブルに置いています。この店ではB級品もどんどん活用して、新鮮な地元の食材を食べてもらいたいと思っています」と山田さんは語る。


 
◆そば打ち体験の受け入れも

 「東雲」はそばの提供だけでなく、初心者を対象にしたそば打ち体験の指導も行っている。現在山田さんを指導者に、秦野手打ちそば認定指導者は14人。体験には年に500組もの幼稚園児や小学生が横浜や東京から参加しにやってくるといい好評を博している。


(写真)
上:のどかな場所に位置する「ふるさと伝承館」
中:地元の旬の食材たっぷりの「しののめ御膳」
下:「東雲」の代表を務める山田洋子さん

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(2009.09.08)