「田んぼの生きもの調査」は99年、JA全農の大消費地販売推進部を窓口に設置した。05年4月には「田んぼの生きもの調査プロジェクト」を設立し、翌年2月にはSR推進事務局を設置した。08年5月には同プロジェクトがNPO法人生物多様性農業支援センター(BASC)として独立した。
調査に参加するJA数は07年度33、08年度39、今年度47と着実に活動は広がっている。また、10月の第25回JA全国大会議案にも「田んぼの生きもの調査の推進」という項目が盛り込まれ、その位置づけは年々重要さを増している。
報告会でJA全農の奥野和雄参事は「地域に根ざした環境SR活動を推進し、事業につなげていきたい」と抱負を述べた。同広報部の大村茂氏は「JA青年組織が研修会を受講し、県本部や子会社との連携活動も広がっている」と紹介した。
(写真)多くの関係者が報告会に集まった
◆「お金ではなく命を生産する農業を」
BASCが主催する田んぼの生きもの調査には、今年度上半期だけでも昨年1年間に匹敵する約2400人が参加。講習会はすでに昨年度を上回る360人が受講している。
昨年11月のラムサール会議では水田決議が採択され、水田のもつ生物多様性機能が世界的にも評価されたほか、日韓生きもの調査交流会の開催や、ラオスでも映画「田んぼ」が紹介されるなど、国際的な注目も高まっている。国内でも今秋に「田んぼ市民運動」が始まるなど、大きな動きになりつつある。
BASCの原耕造理事長は報告会で次のように語った。
「田んぼの生きもの調査は参加しないとわからない。農家のおばちゃんも、自分の田んぼに入って調査することはほとんどないし、実際にやると99%の人がはまる。
これからの水田の価値は、コメの品質や収量だけでなく、生物多様性によって評価されるべき。これまで農業は“業”の部分、つまり生産性・品質向上や規模拡大での食糧生産など、99%が金の単位でやってきた。これからは“農”の部分、つまり命を育み季節を感じることなど、命の生産を中心にしなければならない」。
BASCではこれからも生きもの調査アシスタント・インストラクター育成のほか、メッセンジャー講習会なども開き、人材育成や情報発信などに努める予定だ。
(写真)BASC 原耕造理事長