農政・農協ニュース

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TPP参加、慎重論相次ぐ―民主党農林水産部門会議

 JAグループは10月19日午前、「米の需給・価格安定と万全な所得補償を求める全国代表者集会」を開いたが、同日午後には、民主党農林水産部門会議で決議内容を報告するとともに議員らと意見交換を行った。

◆政治の力、発揮を―茂木会長

あいさつする茂木JA全中会長 筒井信隆農水副大臣はあいさつで「菅総理の初心表明にあったTPP参加への検討、EPAへの積極的な参加と同時に農業の振興・再生を両立させていく―との表現には政務三役としても一致の考え。TPPを慎重に検討していく姿勢を今後も堅持していく」と話した。
 また、戸別所得補償モデル事業については「過剰作付や主食用米の作付面積は減少し、米粉・飼料用米の作付面積は増加したことから米価下落の要因はない。米価の下落幅を補てんするための政策であり、米の買い上げ(で米価維持)をすることはこの政策と矛盾することを理解してもらいたい。また非参加農家にも税金によってメリットを与えることになり不公平感を与えることになる。備蓄前倒しへの声もあるが食糧法の規定で備蓄米を価格支持のためにしてはならないとの事実があることも理解してほしい」とも述べた。
 茂木守JA全中会長は「政府はTPPの参加を検討すると示されているが日米FTA、日豪FTAを締結する以上の壊滅的な影響が追及される。農業生産や自給率の大幅な低下を招き、日本農業の衰退につながる。TPP問題には今回の会議で採択された決議に基づいて毅然とした態度で望んでほしい。米価に対しても生産現場の要望が十分反映されるよう政治の力で需給環境を変えていただくよう要請したい」と理解を求めた。

(写真)
あいさつする茂木JA全中会長

◆品格ある国づくりを―議員から活発な意見

 会議では議員からは次のような意見が出た。
 「TPPは誰の思惑かもわからず政府の方向性ともあわない。単に反対するのではなく、きちんと理論を持って反対していこうと思う。国益に関する重大な方針であるため、めざすべき姿をしっかり議論して判断していきたい。JAグループのみなさんにもTPPのいかがわしさを訴えてもらいたい」。(茨城県・福島のぶゆき議員)
 「TPPへの参加は日本の地方や農山漁村が大変なことになる。民主党の政策でも食い違うところもあり、この機会にしっかり合わせていきたい」。(三重県・森本哲生議員)
 「モノの値段が下がることは、ある意味消費者には喜ばしいことだが、自由貿易にも最低限のルールがある。
品格ある国づくりのため、消費者理解を得ながら十分な議論が必要」。(東京都・大河原まさこ議員)
 「特定の国に追いつき追い越せという短絡的議論ではなく、利害得失を考えた交渉をすべき。そうでなければ大いなる決意で踏みとどまらなければいけない」。(秋田県・京野君子議員)

◆米の買い上げを―JAグループ

 米価問題と戸別所得補償制度について、JA全中水田農業対策本部の中野委員長は「当初は期待していたが過剰米が米価下落の圧力となり、戸別所得補償制度も要因だと心配している。今後も価格下落分が補償されるのか不安。米価が下がっても経営が成り立たなければ自由貿易ではない。現場が安心して農業をやれるようでなければ、農家と政治の信頼関係はない」と意見した。
 永田正利JA全農経営管理委員会会長は「農家からなんとか米価下落を食い止めてほしいとの強い要請があがっている。持ち越し在庫を政府の力で買い上げてほしい。それだけで価格が上がるわけではないが、農家への安心と次年度の戸別所得補償制度への対応につながると思う」と強調した。
 座長の佐々木隆博氏は米価の値下がり問題に対し「戸別所得補償制度に取り組んだのはがんばっている人たちにしっかりがんばってもらうため。ぜひ一緒に協力していただきたい」と理解を求め、TPP問題については「(JAグループの)みなさんと同じ気持ちで行っていきたい。国を開くという受け身外交から、われわれが世界に発信していく能動的な外交への転機だと思っている」と決意を述べた。

(関連記事: 「米の需給・価格安定と万全な所得補償を求める全国代表者集会」 )

(2010.10.20)