◆バイオエタノール需要を上方修正
昨年夏からの世界の穀物・大豆の価格高騰は、▽ロシアの大不作による小麦・大麦など穀物輸出禁止措置、▽トウモロコシのバイオエタノール向け需要の増大、▽中国の大豆をはじめとする旺盛な輸入がおもな要因とされている。
ロシアの禁輸措置は、ロシアを調達先としていた北アフリカ・中東地域の食料事情に大きな影響を与えそれが現在のリビア情勢にまで続く政変、暴動の引き金になったと指摘されている。
こうした不安定な中東情勢を背景に原油価格が高騰したことから、トウモロコシのバイオエタノール需要の増大に拍車をかけ、さらに価格高騰をもたらしている。
米国では再生可能燃料の使用量を義務づけていることもあって、トウモロコシのバイオエタノール向け需要の見込みを2011年になってから何度も上方修正し、国内需要の約4割を占める1.3億tの仕向け量を見込んでいる。日本への飼料用など輸出量約5000万tを大きく上回っている。
米国農務省は3月1日現在の米国農家の作付意向調査結果を3月末に発表した。
それによるとトウモロコシの作付意向は4.5%増えるとの結果だった。しかし、同時に公表された期末在庫率の見込みは5%と過去最低水準(95/96年と同水準)だったことから、相場上昇し08年6月の1t297ドルを更新し同300ドルを突破、4月11日に305.5ドルを記録した。その後、一時的だが小麦のシカゴ相場価格を15年ぶりに上回った。
トウモロコシ価格は06年時点にくらべて3.3倍の水準となっている。
◆小麦の作付は増加
米国農家が、価格が高騰するトウモロコシの作付を増やすことは予想されていたが、これにともなって小麦の作付を減らし、それがさらに小麦価格高騰につながるのではないかとの見方もあり(本紙2月20日号)、米国農務省の作付意向調査では小麦全体で3年ぶりに8.2%の増加という結果となった。
ただし、冬小麦の作柄は4月時点で優良〜良の比率が35%だという。史上最高の単収を記録した前年同時期のこの比率は69%だから大幅に悪化していると報告されている。テキサスやオクラホマの乾燥が影響しているという。また、春小麦の作付進捗率も昨年同時期は39%だったのに対して今年は6%と出遅れている。雪解けによる水分過剰が影響していると報告されている。
トウモロコシの作付意向増加の影響で減少したのが大豆だ。昨年にくらべて1%の減。これにはトウモロコシ価格の上昇がある。通常、大豆の価格はトウモロコシより2.5倍程度高いのが相場だった。ところがトウモロコシ価格の上昇でその比は2倍以下にまで縮小しており、トウモロコシの作付のほうが有利と判断されたという。
米国の大豆の期末在庫率見通しは4.2%でトウモロコシ同様に需給ひっ迫が考えれるが、世界全体でみるとブラジルとパラグアイで史上最高の生産量見通しとなっていることなどから需給には一定の余裕があるとみられている。
◆作付・生育動向を注視
米国のトウモロコシ期末在庫率が5%という見込みは、2〜3週間分の在庫しかないということを意味する。
貿易量9000万tのうち米国からの輸出量は55%を占める。作付意向調査では前年より増える見込みだが、小麦と同様に作付進捗状況は4月時点で9%と前年同期の46%とくらべて大きく遅れている。このため作付が遅れると新穀の収穫も遅れ、2011/2012年度当初(2011年9月)には供給に影響が生じるのではないかとの見方も出ている。