「農協は組合員のためにある」ことを忘れずに
◆絶品の冷凍米飯にまず驚く
「これは旨いよ」
今村先生がが思わず叫んだ。眼下に矢部川の豊かな流れをはさんで八女市内が一望できるという眺望のよいJAふくおか八女の食品加工センターの一室でのことだ。
それは、国産ウナギの蒲焼と蒲焼のタレがしっかりしみ込んだご飯を竹の皮で包んだ冷凍食品の「うまうま」だ。冷蔵庫の必需品でお酒を飲んだ後や小腹が空いたときに食べると松延利博組合長お墨付きの逸品だ。
さらに生協と開発したという冷凍の「竹の子おにぎり」、ダイエット志向の女性に人気の「こんにゃくごはん」も美味だった。
今回のテーマは「農業6次産業化のトップランナー」。そのためほ場を訪れたのは、2日目の早朝にまわった星野村の茶畑だけで、実際に見せてもらったのは、直売所「よらん野」と道の駅「立花」(直売所)、八女茶加工センター、パッケージセンター、環境センターと選果場そして食品加工センターだった。
(写真)今年春にオープンした直売所「よらん野」、看板の左側に天皇杯受賞6作物が
◆多彩な農産物と優秀な栽培技術をもつ産地
JAふくおか八女は福岡県南部の八女市・筑後市・黒木町・立花町・広川町・上陽町・星野村・矢部村の8市町村を管内とし、東は大分県、南は熊本県と境を接している。
八女の「母なる川・矢部川」がほぼ中央を流れ、肥沃な大地と地域の暮らしを育み、古くから栄えた土地だ。
JAの販売事業をみると、米麦大豆が、販売事業253億円(21年度)の8%、みかん・ぶどう・なし・キウイフルーツなど果樹類が26%、イチゴ・ナス・トマト・タケノコなどの野菜類が34%、電照菊など花きが18%、特産品のお茶が14%などとなっており、多彩な農産物の産地だということが分かる。
そして今村先生が再三指摘されているように、ブドウ・茶・ナシ・イチゴ・い草・大豆の6部門で天皇杯を受賞しているように、品目が多いだけではなく、優れた農業技術が持っている産地でもある。
(写真)「八女葉」をつくる茶加工センター
◆消費地と直結した直販事業が伸びる
こうした多種多様な農産物を有利に販売するために合併してJAふくおか八女が誕生した平成8年に東京事務所を開設。生協や量販店など消費サイドの情報をリアルタイムで伝え、その情報を有効に活かして「組合員に最大限の利益還元ができる」事業として、直販事業を立ち上げる。
そして、平成11年秋にはパッケージセンター(PC)を開設し、生協などのニーズに合わせたイチゴの包装などを開始する。19年には黒木町に第2PCを開設。直販事業は年間41億円の規模に成長。2つのPCで約190名が働いており、地域に雇用も創出した。
平成14年には、中国冷凍野菜の残留農薬問題や無登録農薬使用問題などが発生し、全国的に「食の安全」への感心が高まるが、JAではいち早く「環境センター」を14年9月に建設し、全生産者から「農薬安全使用基準の遵守」に関する誓約書の提出と栽培記録の記帳を義務づけとともにこのセンターで残留農薬検査を実施する。
このあたりのことは既によく知られていることだといえる。
(写真)星野村の茶畑
(続きは 【シリーズ JAは地域の生命線】 で)