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【インタビュー 政治評論家・森田実氏】政治の基本は希望を与えること

 9月2日、野田新内閣が正式に発足した。各種世論調査結果では、支持率は高いが民主党政権になって3人目の首相である。2年前の政権交代からなぜ、こんな混迷に陥ってしまったのか。政治評論家の森田実さんは、政治の基本を忘れ傲慢な政治家に一瞬にして豹変したからだと、「政権をとることの恐ろしさを感じた」。大震災に直面した今こそ、政治の基本に立ち返らなければ政権交代に意味はなかったことになる、という。

新政権、課題は「人の声を聞く」


◆傲慢な権力者に豹変


政治評論家・森田実氏 私は小泉改革以来の日本国民の元々の生き方をまったく蔑ろにしてアメリカのモノマネ社会を作ろうとする政治を批判し続け、その対抗勢力として民主党を応援してきました。
 もちろん民主党政権のなかにも小泉・竹中的な勢力はいっぱいいて、以前から彼らとは論争してきたのですが、政権交代が起きたときに、私は思わぬ体験をしました。
 それは当選した議員たちが、一瞬にして傲慢な権力者に変わったということです。それまでは自民党が長年の権力の座にあぐらをかいて威張っていた。一方、民主党は野に居て国民のなかに入って生きることをめざしてきた。ところが政権をとるや、民主党議員の意識が自民党の傲慢な議員と同じになった……。民主党は自由民主党に大化けした。この一瞬の意識の変化は恐ろしいものだなと思いました。政治権力をとるとはこういうことか、と。
 鳩山首相はまったく誰に相談することもなく言いたい放題を言うようになったし、小沢幹事長は、党は俺のものだ、とますます傲慢になった。
 とくに鳩山首相の普天間問題に対する対応は、事もあろうに自分が主張してきたことが通らなくなった段階で辞職するのではなくて、まったく反対の提案を飲んでから辞めるという最悪の形の辞職をした。
 菅首相になってからは、政治権力とは首相になった自分一人のものだといわんばかりのわがまま勝手な行動をとり、自分勝手に増税を打ち出して参院選挙に敗れた。そのうえで国会のねじれが悪い、という妙な理屈で自分の愚かさを覆い隠そうとしてきた。
 その上、尖閣諸島問題では外交権を事実上放棄し、地方検察庁の次長検事が外交的配慮をもって釈放するというとんでもない無責任な決着をした。この直後に、あの大問題のTPP参加発言です。


◆罪深い第3の開国論


 そもそも菅前首相の第3の開国論はものすごく罪深いものです。
 第1の開国とは、実は米国から押し付けられて不平等条約を結ぶことになったわけで、それを解消するために日本は数十年の臥薪嘗胆を強いられた。
 さらに第2の開国を大喜びするのはとんでもないことです。軍部が暴走して敗戦になり、日本が占領下に置かれたその結果としての開国ですよ。
 にもかかわらず菅首相はTPPで第3の開国だとはしゃいだ。TPPとはわが日本国民に罠をかけるがごときものですよ。
 本来、このTPPに対しては外交権を持つ政府が闘うべきなんです。農業者の立場に立って、わが日本国の国益を守る立場に立って、われわれには生きる権利があるんだ、もしわれわれと仲良くやりたいのなら、日本人が農村においても漁村においても、里山においても生きられることが条件だ、それを受け入れない以上、だめだと政府ははっきり言うべきです。
 それをやらずに、菅首相は最初からTPPを歓迎し、開国だ開国だと、はしゃいだ。多くの国民が怒るのは当然です。


(続きは 特集・【インタビュー】政治の基本は希望を与えること  政治評論家・森田実氏に聞く で)

(2011.09.12)