福島など産地、原発事故にあらためて怒り
◆22年産米の在庫は解消
JA全農が公表している米をめぐる情勢によると、玄米価格は東日本震災の影響と原発事故の終息が見通せないことから、22年産の玄米の市況価格は大幅に上がっている。
たとえば、福島産コシヒカリの9月上旬の相対取引基準価格は60kg1万3100円だったが、市中価格は1万9000円と5900円も高い取引が行われている。その他の銘柄も市中価格は相対取引基準価格よりも5000円から1万円も高く取引されている。
JAの担当者の話は、どの産地も22年産米の在庫は「ほぼゼロ」や「倉庫に少し米はあるがすべて契約済み」などだった。昨年のこの時期は21年産米の在庫を抱えさらに新米の集荷が迫るというなか、「倉庫をどう手配するか頭を抱えている。こんなことは初めて」といった声をレポートしたが、「倉庫の風景は様変わりしました」(北海道のJA)という。福島県内のJAでも直売所などで買いだめの動きもあったという。
こうしたなか23年産米の販売がスタートした。全農は相対取引価格を昨年同時期より60kgあたり1000円〜2000円以上高い1万2900円〜2万2000円を基準価格として提示しているが、市中での取引価格はさらに1000円〜2000円程度の高値で推移している。
九州のJA担当者によると提携関係にある卸業者などからは早めの出荷や、例年よりも取引量を増やしたいとの意向が伝えられており、「玉の確保を急いでいる感じだ」という。
北海道のJAからも「いくつか新規の業者が産地に現れ取引きの依頼もあった」と話す。
各地域とも23年産米の概算金は昨年より60kgあたり1000円から2000円程度引き上げている。とはいえ、相対取引価格ベースでみれば21年産は1万4000円台、20年産は1万5000円台で推移したことを考えると「23年産の価格水準が戻ったとはいいがたい」(九州のJA)のが実態で、生産者からすればまだまだ低米価であるというのが実感だ。
実際、玄米価格は上昇しているが末端の精米価格は上がってはいない。総務省の小売物価統計によると今年7月の5kg価格は2003円(単一原料米)。昨年7月が2141円だからむしろ下がっている。
しかしながら、玄米価格としては上昇しているため、生産者のなかには「もっと上がるのではないかとの期待が頭をよぎっている人は多い」(秋田県のJA)という。とくに今年は放射性物質の影響が懸念されるため、「検査の結果、安全が確認された地域では、農家から高値で買い付けようとする動きもある」(同)という。
(続きは クローズアップ農政【23年産米の生産・流通】 で)