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BSE検査、「30か月齢」への引き上げ諮問へ  厚労省

 厚生労働省はBSE(牛海綿状脳症)対策を見直すことを決め、近く食品安全委員会に諮問するが、その諮問内容が現在の検査対象月齢である「20か月齢超」から「30か月齢超」とした場合のリスク比較などとすることが分かった。自民党が12月15日開いた畜産・酪農対策小委員会で厚労省が説明した。

◆特定危険部位、除去の「全月齢」対象も見直し

 厚労省が食品安全委員会に評価の依頼を予定している諮問内容は、「国内措置」と牛肉の輸入規制に関わる「国境措置」だ。
 国内措置では、出荷された牛に対して現在、と畜場で行われているBSE検査の対象を生後「20か月齢超」から「30か月齢超」と引き上げた場合のリスクの比較の評価を求める。 また、除去する特定危険部位(SRM)についても、現在は「全月齢」を対象としている「頭部」、「せき髄」、「せき柱」を「30か月齢超」とした場合のリスク評価を求める。
 国境措置についても国内措置と同様の内容を諮問。米国産やカナダ産の牛肉の輸入条件を現在の「20か月齢以下」ではなく「30か月齢以下」に引き上げた場合のリスク評価を求める。SRMについても国内措置での諮問内容と同様の変更をした場合のリスク評価を求める。
 さらに、この2つの評価を終えたのちに、国際的な基準をふまえてさらに規制する月齢を引き上げた場合のリスク評価も求める予定だ。

◆なぜこの時期なのか?

 わが国では平成13年(2001年)9月10日に1例目のBSE感染牛が確認されたことを受け、政府は▽と畜場のでの全頭BSE検査(スクリーニング検査)とSRMの除去・焼却を実施するとともに、▽感染源とされた肉骨粉の完全使用禁止(食肉処理過程で出る肉、皮、骨などの残さから製造される飼料原料。感染牛が原料となったことから感染が拡大)、▽農場での死亡牛検査(サーベイランス検査)を行ってきた。
 また、国内で飼養されているすべての牛に「耳標」を付け、食肉となった段階でも10桁の耳標番号によってどこで出生しどこで飼養されていたのかといった記録が分かるトレーサビリティシステムもつくった。
 国内のBSE感染牛はこれまでに36頭が確認され、平成21年度(2009年)以降は発生が確認されていない。
 この間に20か月齢以下の発生例が確認されなかったことから食品安全委員会の答申に基づき、平成17年から全頭検査を見直し検査対象を20か月齢超とした。 同時にこの「20か月齢以下」を平成15年に相次いでBSE感染牛が確認された米国とカナダの牛肉輸入再開の条件とした。
 ただし、国内では地方自治体が全頭検査を継続している。20か月齢以下の牛の出荷量は全体の13%と少ないことや、消費者の安心を求める声に応えるためだ。

◆不純な動機は国民の不信を招く

 9日に開催された厚労省の審議会でも委員からは、消費者は現在も全頭検査を前提としており「安心の第一歩と考えている。これをやめるには納得できる材料と説明が必要だ」との意見のほか、「国内措置と国境措置がいつもリンクして評価される。外国からの要請があったから見直す、と国民は受け取る」との指摘があった。
 平成19年に米国とカナダは日本政府に対して輸入条件見直し協議の要請をしてきており、野田首相は日米首脳会談で輸入条件の見直しを検討すると米国に表明した。
 こうしたことから15日の自民党畜酪小委員会では「動機が不純。外圧に負けてやっていると国民は不信感を持っている。30か月齢以下の牛肉輸入へ緩和するとの話が先行し、食品安全委員会も不信が持たれる」(野村哲郎参議院議員)といった批判が相次ぎ、「米国の政治圧力に屈して見直しを行うことには断固反対する」との決議を行った。
 わが国では21か月齢と23か月齢での発生が確認されている。これを理由にBSE検査対象を20か月齢超としてきた。30か月齢超に見直すならこの2例についてしっかり納得のいく評価をしなければならない。JAグループもTPP参加の「入場料」として政治的圧力で見直しを行うことには断固反対している。
 食の安全・安心に関わることを政治的判断で見直すことはもってのほかだが、BSE発生から今年で10年になるから見直す、というのもまったく「科学的」ではない。

 

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