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アジア50億人市場の開拓を 輸出支援のセミナー開催  農林中央金庫

 国産農水産物の輸出をサポートするため農林中央金庫は1月17〜18日、東京都内で「食のアジア販路開拓セミナー」を開いた。JA、JF、農業法人など32団体が参加した。

「食のアジア販路開拓セミナー」 農林中央金庫は、農商工連携や6次産業化のサポートに取り組み、その一環として販路拡大を支援する目的で、地域段階、全国段階の商談会の開催や個別案件のビジネスマッチングに力を入れている。
 販路拡大については輸出も有力な手段として捉え、今回のセミナーを関係者が海外で商談をするためのアジア諸国のマーケット事情や商談に必要な準備事項などを情報提供するために開いた。
 1日めはアジアの市場の今後の見通しや流通、販売環境、消費者ニーズなどについて基調講演が行われた。


◆食はアジアの「国民的パッション」

 世界人口は昨年70億人を突破したが、アジアの人口が約40億人を占める。予測では2050年に52億人に達する。ビジネスコンサルタントの辻岡正弘氏(エキシゴ・コンサルティング社)は「アジア50億市場を捉える」と題した基調講演のなかで、「食」はアジアの国々で「国民的パッション」になっていると話し、食への旺盛な関心のなかで日本産の農水産物は「外観、味」で最高の評価を受けていると指摘した。
 アジア地域は人口増だけでなく中間層が大きく増えることも予想されている。辻岡氏によるとドイツの研究機関はアジアの中間層は09年の5.3億人から30年には32億人になると分析しているという。また、フィリピン、マレーシア、インド、インドネシアなどを中心に若年層が多いことも特徴だ。
 大型スーパーなど近代的小売業も急速に拡大しており、都市周辺ではコールドチェーンも整備されているほか、大手小売業者は低価格で販売するため、海外輸入業者からの直接仕入れを志向しているという。
 日本産農水産物には定評があるものの、国により規制や慣習が異なることや消費者ニーズも違うことから、海外バイヤーとの商談に向けて市場調査を行い、投入する商品や進出形態など検討していく必要があるとした。


◆「バイヤーニース」の把握も重要

 三菱UFJリサーチ&コンサルティング国際営業部の杵渕裕美氏は消費者ニーズだけでなく、成長を続けるアジア各国の「バイヤーニーズ」の把握も輸出促進に必要なことを指摘した。たとえば、ローカルスーパーでは商品アイテム数を豊富にそろえることを求めているのに対し、高級スーパーは他店にない農水産物を求めるなど現地での販売戦略が違う。「高付加価値、高価格を求めているのか、ボリュームゾーンで勝負する商品を求めているのか」を見極める必要がある。
 日本産農水産物への人気は高いものの、香港、シンガポール、台湾など日本食市場が成熟した国では競争が激しいことも強調された。そのなかで高所得層を中心に「価格」から「価値」を重視する消費者は増えており、たとえば「健康」をキーワードにした農水産物の生産、加工などの商品が今後求められる可能性が高いことなども指摘された。


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