協同組合の力が社会と人間を守る
「99%」の側に立つ協同組合の価値観を全面に
◆なぜ、新自由主義は「組合」を攻撃するのか?
田代 みなさんのお話を伺っていると、単なるTPPではなくて、今日のグローバリーゼーション、ポスト冷戦体制下のグローバリーゼーションの問題であるということですね。さらに補足があればお願いします。
中野 鈴木先生が指摘されたように、市場に任せ強いものが勝ちという経済でいいという新自由主義のイデオロギーが根本にあって、それが堤さんの話のように、公務員や教職員組合を既得権益だとバッシングしてきたという流れですね。
ここでおもしろいと言ってはなんですが、実は新自由主義的な人たちは必ず組合をターゲットにすることを指摘しておきたいと思います。これは組合発足の由来を見るとよく分かる。
組合というのは産業革命後、19世紀ぐらいから出てきます。これはカール・ポランニーが主著「大転換」のなかで語っていることですが、産業革命というものが社会をぶち壊して市場で人間を取引するようになった。あのころは児童労働の規制すらなく労働を商品として扱いはじめ、自然もどんどん破壊されていくということが起きてきたんですが、産業革命や市場がもたらすものが分かっておらず、経済学も古典派経済学で市場に全部任せればいいという考えでした。
しかし、それでは現実がめちゃくちゃになってきたので、組合をつくって人間や社会を守ろうという考え方が出てきたわけですね。たとえばロバート・オーエンです。つまり、そもそも組合の成り立ちとは市場が人間や自然を破壊するのでそれを阻止するために出てきたということです。
だとすると市場原理主義者がなぜそれを既得権や利権などと呼ぶかといえば、市場に任せておけばいちばん強い者に富が行くはずなのにそれを阻止しているからです。本当は強いもののところに行くべき富を彼らが行かないように阻止をしている、それを既得権益と呼んでいるんですね。今回、TPPで農協がターゲットになったのも米国で公務員や教職員組合がターゲットになったのも、彼ら市場原理主義者が理想とするお金という価値だけで人や物や自然が取引される夢のような世界を阻止しているから、組合が気に入らないわけです。
しかし、組合は団結して市場原理だけで動かないように人間や社会を守ります。そのため当然、政治力とも結びつきます。そうするとこれを破壊するにはもっと強烈な力がいるということになる。
(写真)「ウォール街占拠」。米国市民にも広がる反TPP運動