◆新基準値への疑問
農水省は畜産物の放射性物質調査について▽原乳では原発事故当初に暫定規制値(200ベクレル/kg)を超過したものがあったが、4月以降はすべて50ベクレル/kg以下で超過したものはない、▽牛肉ではセシウム汚染稲わらの給与で暫定規制値(500ベクレル/kg)を超えたものが見つかったが6万7123検体数のうち0.2%にとどまり98.4%は100ベクレル/kg以下だった、▽豚肉・鶏肉・鶏卵ではすべて暫定規制値以下で99.3%が100ベクレル/kg以下だった、ことを説明した。
これを受けて委員からは「現場の取り組みをもっと情報提供すべき」などの意見も出た一方、畜産物に限らず自治体によって食品の放射能検査が違い「かえって消費者は不安を感じている。農水省が一定に指針を示すべき」との指摘もあった。 また、4月から牛乳は現行の200ベクレル/kgが50ベクレル同に、食肉が500ベクレル同が100ベクレル同に引き下げられることについては「何が根拠なのか」「現行の暫定規制値では安全ではなかったのか、ということになる」などの意見が相次いだ。
これに対して農水省は厚労省の考え方として、暫定規制値に適合している食品は健康への影響はないと評価され安全は確保されているが「より一層、食品の安全と安心を確保する観点から」引き下げるとしていることを紹介。
ただし、厚労省の新基準については文科省放射線審議会に諮問され審議されていることにも触れ、その議論では▽間違ったメッセージが発信されないよう留意することが大事、▽基準値は閾値(その値以下であれば安全という値)ではなく、出荷制限をかけるなど管理の目安の値。これを長く守っていくことによってリスクが低減するという意味、▽乳児用食品の基準値(50ベクレル/kg)はあまりにも安全を見過ぎているのではないか、といった指摘が出ていることが報告された。
◆汚染稲ワラ、早急な処理を
そのほか生産者委員からは「大震災で飼料供給が止まったが1200トンの飼料用米があり1頭たりとも死なせずに済んだ。飼料備蓄の大切さを感じた」、「飼料自給率の向上への支援策が重要だ」などの指摘もあり、とくに政府の事業仕分けで飼料穀物備蓄が60万tから20万tへと削減されたことについて批判的な意見があった。
JA全中の冨士専務は3点を指摘した。
1点目は輸入牛肉の規制緩和問題。「なぜ、今見直しか疑問を感じざるを得ない」と強調、日本と米国ではBSE対策としての飼料規制のあり方に違いがあることや、日本に義務づけられているトレーサビリティシステムが米国にはないことなどを挙げ、月齢制限の問題だけでなく対策全体の違いを消費者にも情報提供をして議論することが重要と提起した。
2点目は放射性物質の新基準について。とくに飼料を問題にした。酪農では毎日搾乳されるため、牧草やサイレージを給与前に検査する必要があるが「現場に丸投げしても対応できない」として国、県などの体制づくりを求めた。
また、汚染された稲わらなどのうち8000ベクレル/kgを超えたものは国が処理するとしているが、それ以外の飼料の処分は農家任せになっており現場では大きな問題になっているとして対策を求めた。この点について他の委員からも「汚染稲わらが積んであるというだけでまた風評被害が起きてしまう」と早急な処理を求める声があった。
3点目は24年度の酪農対策のうち、加工原料乳生産者補給金単価について。一昨年、昨年の猛暑続きで生乳生産量が減少しているなか、配合飼料価格の高騰、乳オス価格の下落などで経営環境が極めて悪く、現行の11・95円/kg以上で審議会に諮問するよう求めた。
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