◆飼料価格高騰を反映
加工原料乳生産者補給金単価は▽子牛価格の低下、▽配合飼料価格の上昇、▽原油価格の上昇にともなう光熱動力費の上昇などを反映して、25銭引き上げ、1kgあたり12.2円とした。
上げ要素はkgあたり▽子牛価格の下落分18銭、▽流通飼料費の上昇分6銭、▽光熱動力費の上昇分3銭など。一方、下げ要素には乳牛償却費などがあるがそれらを算定に折り込んだ結果、25銭の引き上げとなった。
限度数量は今年度は185万tだったが、東日本大震災の影響で北海道の生乳が都府県への飲用向けになるなどで20万t減となる見込み。しかし、バター在庫が低水準となっていることからこれを回復することが喫緊の課題であるとして、2万tの引き下げにとどめ183万tとした。
バターの在庫は22年度末では2万6000t程度だったが、23年度末では1万9000t台となる見込みだという。
食肉の安定価格、肉用子牛の保証基準価格と合理化目標価格は、上げ要因と下げ要因が拮抗していることから、いずれも据え置きとなった。
また、審議会への諮問事項ではないが、鶏卵の補てん基準価格と安定基準価格については、生産コストに占める飼料費が7割と高く配合飼料価格の上昇が他の畜種よりも影響が大きいことふまえ、補てん基準価格を1kgあたり185円、安定基準価格を同158円とぞれぞれ2円引き上げた。
農水省は今回の畜産物価格について「現在の経済情勢を適切に反映したものであり、畜産農家や酪農家の経営安定や牛乳・乳製品と食肉の安定供給を確保できる水準」としている。
◆価格算定のあり方の検討を
審議会畜産部会では、畜産政策について「国民全体と(畜産・酪農についての)価値の共有化を進めるべき」、「飼料価格の大きな変動があった場合は政策価格の期中改訂も検討すべき」などの意見が出た。その他は以下の通り。
【酪農・乳業関係】
▽酪農環境負荷軽減支援事業は経営の継続に支障が出ないよう経営安定対策として位置づけるべき、▽生産者が自ら生産した牛乳をより自由に売れるよう工夫を、▽小規模ながら自ら加工を行っている都府県の酪農への支援も必要。
【食肉関係】
▽肉用子牛生産者補給金制度の保証基準価格は自由化前の価格を基準としているが、最近の経営実態をふまえ価格算定のあり方についての研究を始めるべき。▽牛肉の卸売価格が下落しているにもかかわらず小売価格がそれほど下がっていないことを検証すべき。▽消費者の信頼を確保するため生産履歴も含めた豚トレーサビリティを検討すべき。
【その他】
▽放射性物質の新基準値は消費者の安心感と乖離がある。分かりやすい情報提供を。▽汚染された稲わらや堆肥などの最終処分を早急に。牧草地の除染方法について政府が率先して示してほしい。▽飼料用小麦がより利用拡大できるよう検討を。▽飼料用米は農地の有効利用にも資するため畜種ごとの利点もふまえ取り組み拡大を。▽BSE対策の見直しは消費者が納得できるよう科学的知見に基づき十分な検証と分かりやすい説明に努めるべき。
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