JA全農は18年前からリン鉱石を中国の大手リン酸メーカーの瓮福集団有限公司から輸入しており、2009年に両者は長期安定的な取引と相互発展をめざす戦略的パートナーシップ協定を締結している。
一方、瓮福は2010年に世界的にリン安需要が増大していることから、リン安の生産増強のため銅精錬メーカーの紫金銅業と物流会社の山水物流とともに合弁会社、「瓮福紫金」を設立した。銅精錬を行う紫金銅業から副産物として生産される硫酸を活用し、リン酸質肥料原料を生産して国内外に販売するのが狙い(リン安の製造に必要なアンモニアは外部調達する)。
この合弁会社設立にあたり、瓮福紫金はJA全農に戦略的パートナーシップ協定に基づいて出資を要請、これを受けてJA全農は今年3月の臨時総代会で資本参加を決めた。
3社から譲渡された株式は10%(約7億円)。全農は役員も派遣し経営に参加する。
同社は年間40万tのリン安と10万tのリン酸液を生産・販売する。リン安工場は4月に完成、リン酸液工場は8月に完成予定で秋から試験的に製造を始める。
中国向けに20万t、海外輸出に20万tを計画し、うち日本向けに6万tを予定しており、JA全農が製品引取と販売を担う。同工場は日本からもっとも近い。
世界的に肥料需要が増大するなか、わが国はリン酸質肥料原料は100%海外に依存、その安定的な確保が日本農業にとって大きな課題となっている。
調印式でJA全農の神出元一専務は「株式取得で責任を持つことに身の引き締まる思い。農家の出資によってつくられている農協を会員とする全農が今回の出資によって安定確保を確実にすることで農家の営農継続に貢献できることをうれしく思う。これを契機に堂々の発展を」と中国側の出席者にあいさつした。
瓮福集団の何浩明・薫事長は「瓮福は全農への安定的なサプライヤー。未来に向かって協力しお互いの発展をめざしていきたい」などと述べた。
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調印式を終え握手を交わす、左から紫金銅業の何立・総経理助理、瓮福集団の何浩明・薫事長、JA全農の神出元一代表理事専務、山水物流の鄧剣江・総経理。
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