◆「協同」の先駆者を讃えて
今年の受賞者は7部門の「農協人」14名。昭和53年の創設から受賞者数は今年でのべ327名となった。
表彰式で農協協会の佐藤喜作副会長は「近代社会は『経済』というものさしで計られてきたが、その経済の根本である『生産』という言葉を私たちは粗末にしてきたのではないか。『生産』という言葉が使えるのは農以外にないが製造業にも使ってしまった。その結果、農は衰退しつつあり放射能という永久に戦っていかなければならない大変な問題も出てきてしまった。
『文化』ということを考えると、生命体が生存できなければならず、健康であり平和でなければならない。そしてみんなが協同して初めて成り立つ。その先駆けとして実践されているのがみなさん」と祝福した。
経過報告のなかで今村奈良臣農協人文化賞選考委員会委員長は「この表彰はトップダウンで選考する賞とは違い、全国の農協運動の仲間達から声援を受け推薦された人を表彰する意味合いを持ち、選考委員長として深く誇りを持っている。受賞者には大いに自信と責任を感じていただき、自分のやってきたことを農協運動のためにいかに広く深く伝えていくかが大事。この賞が新しい時代に向けての発信源になることを願っている」などと述べ、受賞者1人ずつに表彰状と楯、副賞を贈った。
来賓あいさつでは萬歳章JA全中会長の代読で谷口肇常務が「本章が30年にわたってJA事業や地域農業の発展に尽力、貢献された方々を発掘しJA内外に広く紹介してこられたのは意義深いこと。受賞された方々の顔ぶれを拝見すると各部門の事業で優れた指導力を発揮され地域のリーダーとして多大なる貢献をされてきた方ばかり。JAグループはもちろん、地域社会、日本農業の全体の発展に大きく寄与されてこられたと確信している。
今年は国際協同組合年でありJA全国大会の開催年。大会議案は“次世代へつなぐための待ったなしの協同”がテーマとなる。各地のJAが皆様方の優良事例を参考にさらなる事業転換を図っていかれることを切に願っている」と述べた。
(写真)
上:今村委員長から表彰状を受け取る受賞者
下:あいさつするJA全中会長・谷口肇常務
◆農協運動のリーダーとしてさらなる期待
表彰式、シンポジウムに続き、記念パーティーには約150人が受賞者の祝福にかけつけ会場は和やかなムードに包まれた。
パーティーは石田正昭教授が改めて14名の受賞者を紹介し、東京農工大学の梶井功名誉教授が「国際協同組合年という年に贈られたこの賞は格段の意味があると思う。同時にこれまでずっと農協運動にがんばってこられたご苦労に感謝したい」と乾杯の音頭でスタートすると会場内は歓談に花が咲き、受賞者を囲みながら交流を深めた。
来賓から受賞者に贈られた祝辞では、今年が「国際協同組合年」という記念すべき年であることから農協運動のさらなる発展に向け、先頭に立った活動に期待する言葉が多かった。 また、シンジェンタジャパンの村田興文会長はこれからのJAに期待する方向性を話し、これには会場中が熱心に耳を傾けていた。
(写真)祝賀ムードに包まれるパーティー会場
来賓あいさつ(抜粋)
◆JA全農経営管理委員会副会長
萬代宣雄氏
この賞は同じ農協運動の仲間が敬意を表し贈呈するもので、仲間の思いがこもった非常に価値のある賞だ。
今村選考委員長は「JAほど人材を必要とする組織はない」と常日頃おっしゃっている。まさに受賞者は農協運動のリーダーとして欠くことのできない仲間。
現在、TPP参加への懸念や震災からの復旧復興、原発事故の風評被害など課題は山積している。一方、国産農畜産物や地域を再生する農業の発展への期待は高まっており、農協運動が果たすべき責務は非常に大きい。
これからも日本農業、農協運動発展のためにご指導、ご尽力賜りたい。
◆JA共済連常務理事
島崎元次氏
農協運動の仲間たちが贈る…という言葉、理念に感動した。
今年は国際協同組合年、オリンピック、JA全国大会の開催年と記念すべき年。受賞者のみなさんにはこれを契機にまた元気を出し活躍されることを期待している。JA共済連の役職員としても一緒に農協運動に邁進したい。
◆JA全厚連代表理事理事長
前澤正一氏
全厚連は年間のべ3000万人に医療サービスを提供しており、組合員はもとより地域のみなさんにとってもなくてはならない事業であると責任を感じている。そのなかで病院事業ひとすじで歩まれてきた落合会長の受賞を大変うれしく思う。
受賞者のみなさまには今後とも豊かな経験と高い見識で協同組合運動発展のために一層のご指導ご鞭撻をたまわりたい。
◆新世紀JA研究会代表
鈴木昭雄氏
私も昨年この賞をいただいたが、日に日にその重みを強く感じている。これほど心のこもった表彰制度は全国でも稀だろう。かつて農協運動は“参加することに意義がある”と教えられたが、受賞者のレポートを読ませていただくと農協は選ばれるべき組織であると感じた。いやでも参加したくなるような魅力ある運動にすることが農協運動の基本だということ。国際協同組合年として農協運動思想の優位性、必要性こそいま叫ばれなければいけない。日本の協同組合運動は世界一。国内で議論するだけではなく世界に広める時代にきている。
◆農協愛友会会長
前田千尋氏
シンポジウムを聞かせていただき受賞者のみなさんから共通して農家組合員の生活向上、地域農業の発展、組合員から愛される農協にしたい、といった思いが伝わってきた。
今年は国際協同組合年。協同組合の相互扶助精神をいまこそ一人ひとりが大事にしながら生活していきたい。
◆シンジェンタジャパン株式会社取締役会長
村田興文氏
日本は産業界からすると成熟した先進国の一員といわれているが、日本はG8のなかで唯一、農産物輸出が少ない国。
輸出金額に占める農産物の比率は仏、独は7〜9%だが日本は0.4%。日本にはこれほどすばらしい農産物がありながら、なぜ輸出金額が少ないのか。
今後日本は人口が減っていくが全世界の人口は70億を超えた。次世代の農家、農業ビジネスをしていく方たちが農協に魅力を感じ、一緒になってやっていこうという気持ちになるためにはビジネスの拡大以外にない。
これから日本農業を活性化していくためにはビジネスとして成り立ち、利益が上がり、農業をしたいという人が跡を継いでいく必要がある。海外に日本の米や加工品を買いたい人は多くいる。日本にないものを探すより海外にないものを探す。 ここまで日本の農協を築き上げてこられた諸先輩方の礎を土台に次世代に日本の農業をつないでいくために日本の農協は海外にも目を向け輸出の力を持っている組織であるという時代になってほしいと心から願っている。
◆共存同栄ネットワーク代表
松下雅雄氏
共存同栄ネットワークは3年前、農協運動の後援的な役割を果たそう、生涯農協人であろうじゃないかという仲間で結集した。表彰された14名の方々にはすべての農協の牽引的な役割を果たしていただくことをお願いしたい。
◆JAあづみ福祉課(長野県)
池田陽子氏
国際協同組合年という年に私たちの仲間から受賞者がまた14名増えたことをうれしく思う。少子高齢化や准組合員問題など農協本来の基盤である組合員の土台がゆらいでいる現状で、地域にきちんと農協の社会的役割、経済的役割を発信していかなければならないことを考えると多くの功績者を輩出しているこの表彰事業は意義がある。これからも仲間と力を強くして地域社会に発信していきたい。