次代へつなぐ協同を創る人材を育成
農業体験などで農協人の基本を学ぶ
県内の全新入職員を一斉に研修
◆地元で仕事をしたいとJAを選択
「3カ月は長いなと最初は思っていましたけど、意外と早かったです」というのは、JAくにびきの新入職員・岩成周平さん。
岩成さんは県内の高校から県外の4年制大学に入学、卒業後は横浜の流通関係の会社に就職するが、その仕事に疑問を感じ、目標をもって仕事をしたいと考えるようになる。島根の実家では両親は一般企業に勤める会社員だが、祖父と祖母が水稲や花きを生産している。しかし、その周辺では農業をやめる人もいて、遊休農地になっているところもある。
「先祖からの田んぼをそういう状態にはしたくない」という思いと、地元をもっと活気ある地域にしたいと考え、島根に帰ることにしたという。
そして地元のJAくにびきに就職したが、JAを選択したのは「一般企業とは違う組織」だと感じていたからだ。そして今年の4月からの3カ月間「JA島根ユースカレッジ『新入職員課程』」で県内JAグループの新入職員と一緒に協同組合や農協、そして農協の実務だけではなく実際に農家に通う農業体験などを通じて、農協職員の基本を学んできた。
岩成さんと一緒に「新入職員課程」を学んだJAいずもの野津翔矢さんは、地元の商業高校卒業後にJAいずもに入組するがJAから勧められて茨城県の鯉渕学園に入学し、そこを卒業して今年の4月からJAいずもに帰ってきた。
野津さんがJAを選択したのは、地元で仕事をしたかったことと「地域に貢献しているのはJAだ」と思っていたからだという。
鯉渕学園の2年間があったので野津さんは「早く現場で働きたい」と思っていたためこの3カ月が「長かった」という。そしてカリキュラムのなかでは「マナー」とか「社会人基礎力」などで「人としてこうあるべき」ことを教えてもらったことや「事業推進の心を創る」という講座が、いままで教えてもらったことがない内容で「よかった」という。
岩成さんは「協同組合や農協の基本的なことを学べてよかった」ことと、「農協に勤めることになっても、営業的な仕事をしたい人や営農関係をめざすなど、各人がいろいろな目標をもっていることが分かり、横のつながりもできた」ことが良かったという。
(写真)
苗運び作業する新入職員(ライスフィールド(有)で)
◆協同組合理念の空洞化、意識の希薄化
岩成さんや野津さんが3カ月間集中的に学んだ「JA島根ユースカレッジ『新入職員課程』」とはどういうものなのか、JA島根中央会教育研修部の多久和宏部長と岩田至正次長に聞いた。
平成23年3月に県中央会の萬代宣雄会長が▽望ましい職員教育研修体系の在り方▽新人職員に対する教育研修体系・内容について、「JAグループ島根職員教育研修検討委員会」(以下、委員会)に諮問。県内JAの役員と島根大学の教授や県自治研修所長、JA全中教育部教育企画課長らで構成された委員会が23年10月に24年度から新人教育研修を実施すべきという答申をまとめる。
「答申」では委員会の問題意識として次の5点を指摘した。
[1]協同組合の理念と日常業務の乖離からくる理念の空洞化
[2]職員の協同組合意識の希薄化
[3]農業を知らない職員の増加による農業問題への関心の低下
[4]いわゆる「お客様」対応による組合員の参加参画、帰属意識の喪失を助長
[5]組織(JA)に甘えている職員、心が弱い職員の増加による目標達成・改善意欲の低下
これらの指摘は、全国の多くのJAの共通した問題だともいえる。
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