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【TPP情勢】 情報ひたすら隠す政府、「これで国民的議論できるか」 国会議員から不満続出

 TPP(環太平洋連携協定)参加に慎重・反対の国会議員でつくる「TPPを慎重に考える会」は10月24日に国会内で勉強会を開いた。この日は先週来日した米通商代表部(USTR)のカトラー代表補と政府関係者との会談内容について外務省や内閣府などからヒアリングを行った。しかし、前原国家戦略担当相らとの会談内容について「そもそも表敬訪問。関係国との事前協議の位置づけではなく、踏み込んだやりとりはしていない」などの説明に終始、さらに米国の事前協議の進展具合についても「具体的には進んでいない」といった説明にとどまり出席した議員からは「本当に表敬だけで終わったのか? 税金を使って雑談をしただけということになる」、「米国が何を求めているのかを示さないままで国民的議論はできない」などの批判が続出した。

◆何のためのカトラー来日か?

 W・カトラー代表補は韓国訪問後に来日し、10月17日から19日まで東京に滞在した。
 内閣府によると今回の来日は日本政府の招聘によるものではなく、TPPに関する関係国との事前協議という位置づけではない、と説明した。
 前原誠司国家戦略担当相との会談でカトラー代表補は「現在行われているTPP交渉の進捗状況について紹介があった」という。前原国家戦略担当相は、経済連携に関する政府の基本方針の説明と、TPPについて国内では参加賛成の声のほか、慎重、反対の声もあることなど議論の状況を説明した。
 また、TPP交渉参加に向けた関係国との協議で政府代表をつとめる大島正太郎氏はカトラー代表補と会食。ただ国際関係全般についての意見交換にとどまったという。
 外務省の吉良州司副大臣、片上慶一経済局長との会談では日米間の協議を継続していくことで一致したという。そのほかカトラー代表補は経産省の上田通商政策局長とも会談。その際には枝野幸男経産相にもあいさつした。
 政府からの説明はいずれもTPPについては踏み込んだ意見交換などや要求はなかったというものだった。
 これに対し、慎重に考える会会長の山田正彦元農相はカトラー代表補と会談した際、「TPPの内容を教えてほしいと言うと、米韓FTAの中身を見てください。それ以上のことを日本に要求しています、と言っていた」と指摘、「もっときっちり話してくれなければ困る」と迫った。しかし、政府側からは「具体的な論点について詳細な議論をしたわけではない」、「自動車については米国も強い関心がある、という程度の話だった」、「あくまで表敬。そもそもそういう性格の場ではない」などという回答に終始した。
 これには「税金を使って雑談をやったのか? (それなら)事業仕分けの対象になる」などの強い反発も出た。

◆国民的議論とは何か

 会談の内容がほとんど明らかにされないなか、「それなら米国は日本に何を求めているのか」、「この1か月に事前協議はどこまで進んだのか」といった質問が飛んだ。
 これに対しても「アイデアは示されているが具体的な協議は進んでいない」、「進展があったかどうかについても、引き続き適切に情報提供していきたい」、「出せるものは出せるというのが立場」などと答えるのみ。「なぜ米国の要求が隠され続けるのか? 議論の対象を隠したままで国民的議論はできない」との指摘が出た。
 さらに同会では前回の会合でこの「国民的議論」についてその定義を示すよう政府に求めていたが、この日提示されたのはこれまでのシンポジウムや意見交換会などの開催実績等をまとめた資料だけ。そのため「政府は国民的議論は終わったとの認識なのか」という懸念も高まった。政府はこの会の勉強会も国民的な議論の重要な場と考えている、などと釈明をしたが、国民的議論が煮詰まっているかどうかは「総理が最終的に判断すること」との説明もあり、書面で「国民的議論」の定義を示すよう引き続き要求した。
 山田会長は、この日のやりとりについて関係国が日本に何を求めているのかについて情報収集して提示し、国民的議論をするという「野田総理に言ったことに明らかに反している。ひたすら隠しているのでは国民は納得しない」と強く訴えた。


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