◆需要見通しと同量の生産目標
農水省が全国の需要実績から算出した24/25年(24年7月から25年6月)の需要見通しは799万tとなった。
これに対して供給量は[1]24年産主食用生産量821万t(10月15日現在の予想収穫量)、[2]備蓄米からの代替供給量4万t、[3]6月末の民間在庫量180万tの計1005万tとなる。この供給量から需要量799万tを差し引いた206万tが25年6月の民間在庫量の見込みとなる。
ただし、24年産米は高温障害による精米歩留まり減が発生しているため、農水省は供給量が数万t程度減少することも想定されるとしており、それにともなって6月末在庫量も206万tを下回る可能性もあるとしている。 また、25/26年(25年7月から26年6月)の全国の需要見通しを791万tとした。これをふまえ25年産米の生産数量目標を791万tと設定した。
◆戦略作物の振興が課題
25年産の主食用生産数量目標は24年産より2万tの削減となる。 昨年11月の24年産米の生産数量目標の設定では、需要実績820万tに対して23年産主食用の生産実績が824万tと4万t多かった。このため需要見通しの797万tから4万tを差し引いた793万tが生産数量目標とされた。
しかし、今回は23/24年(昨年7月から今年6月)の需要実績が813万tと確定(7月の速報値より2万t増)し、一方、23年産米の生産実績は814万tでその差は1万tとなったことから、需要見通しと同量の791万tを生産数量目標にしたという。
ただし、前年産よりも2万tの削減となる。
食糧部会ではJA全中の冨士重夫専務が提示された生産数量目標については「やむをえない」としながらも、「2万tの削減となればそこで他の作物を作らなければならない。不足している麦、大豆、加工用米など戦略作物をつくる必要があるが、支援策の強化が必要だ」と主張した。
これに対して農水省は「生産を増やせるだけの予算を25年度で要求していく」と話した。
◆備蓄米の代替供給を明文化
備蓄運営では今年度、東日本大震災の米倉庫の被災や原発事故の影響による特別隔離策によって供給量が不足、それを埋めるために政府備蓄米から代替供給を行った。
今回の指針では今後もこうした事態を想定し、11月の需給見通し確定後に「不作以外の災害等による緊急事態」で供給確保に支障が生じる場合は、農林水産大臣の権限で代替供給ができることを明記した。
これについても食糧部会は了承したものの、JA全中の冨士専務はそもそも政府が弾力的に需給調整に関与すべきとの考えを示し「実際、需要の減少や作況の変動などがある。10万t程度のバッファーをもって政府が売り買いしたほうが需給は安定する。ルール化を検討すべき」と改めて主張した。
これに対して農水省は備蓄運営手法は毎年検証を行って必要な見直しを行っていくとしたものの、「期中にマーケットから米を買い上げるのは、生産調整非実施者にもメリットが及び不平等感が高まるので適切ではない」との考えを示した。
また、24/25年の備蓄運営については、播種前入札で契約できた8万tを買い入れるものの、保有期間が5年を超える米の品質確認を行ったうえで、備蓄米の年産更新のため買い入れ数量同量の8万tの範囲内で非主食用に販売する方針だ。そのため適正備蓄水準を100万tとしているにも関わらず、来年6月末の備蓄量は91万tとなる見込みだ。
このため冨士専務は「100万tを下回ってしまうのに販売するのか。どういう水準で運営しようとしているのかルールはあるのか」と質問した。これについて農水省は「100万tに近い数量を維持したいと考えているが、年産更新もしなければならないなかでの判断」と明確な基準は示さなかった。
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