戦後、農産物の生産拡大や流通の発達などで、均一な品質や病害虫に強い品種が求められ、多くの伝統野菜が姿を消した。
いつしか“幻の野菜”と呼ばれるようになった伝統野菜だが、近年は直売所や地産地消への関心が強まる中、再びスポットライトを浴びている。
生産者やJA、行政などが地域のオリジナル野菜として復活させよう尽力しているケースがいくつもある。そこで今回はそんな伝統野菜の一部を紹介することとなった。
【江戸東京野菜】(東京・JA東京中央会)
江戸時代に参勤交代の大名たちが持ち込んだ野菜が江戸周辺の農家に伝わった。しかし東京の農地減少につれ、危機に陥った。そこでJA東京中央会は復活に尽力。「江戸東京野菜」をブランド化。商標登録して現在30品目が認定されている。
【仙台白菜】(宮城県・JA全農みやぎ)
日本の白菜の原型の1つで、みずみずしく柔らかい。栽培が難しいが、震災復興の中でJAや生産者、高校生などが復活に取り組んでいる。全農みやぎの直営レストランなどでは、これを使ったメニューを考案している。
【雪菜】(山形県・JA山形おきたま)
上杉鷹山が栽培を奨励したとも。雪の中で育つ「とう(花茎)」を食べる軟白野菜だ。セロリに似た食感でくせがない。米沢市が特産品発掘に取り組んだのをきっかけにJAも生産者組合を発足させるなど振興に努めている。
【国分人参】(群馬県・JAはぐくみ)
葉先から根の先までが1mにもなるが、味が濃く香りも良く荷崩れがしにくい。この味を絶やしてはいけないと有志6人が栽培。時間のかかる収穫作業を支援する市民を市が公募するなどして復活に取り組んでいる。
【松本一本ねぎ】(長野県・JA松本ハイランド・JA松本市)
茎が枝分かれしないことから「一本ねぎ」と呼ばれる。下仁田ねぎの仲間で、身が柔らかく加熱すると甘みが増す。しかし植え替えに手間がかかるため生産者は減っていた。今は両JAがそれぞれ生産・販売しブランド化に取り組んでいる。
【赤丸かぶ】(滋賀県・JAレーク伊吹)
通常のかぶより硬く中身、茎ともに赤い。シャキシャキした歯ごたえが特長。高齢化などから作付けが減っていたが、集落営農組合が「産地を廃れさせることはできない」と復活に取り組み、JAも自家採種をしている。
【トウガラシ・香川本鷹】(香川県・JA香川県)
辛みが強く、独特のうまみが持ち味でトウガラシの最高品種だ。以前は輸出もされていたが、いつしか輸入品に押され、生産者は数戸となった。このため地元は「トウガラシプロジェクト」を発
足させている。
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