今回は他の農協の模範となるような10事例を整理し、12月5日、ホームページに公表した。題名は「農業の発展に成果を出している農協の取組事例」。内容は(1)販売総合戦略(1件)(2)ニーズに対応した生産・販売(3件)(3)商品開発・ブランド確立(3件(4)直売所(2件)(5)農業経営(1件)。要点は次の通り。
《総合販売戦略》
◆JAみっかび(静岡県)
ミカンの農家ごとに冷風貯蔵設備を設け、端境期(3〜4月)に出荷できるようにして高値販売▽他産地が品種を多様化する中で、逆に品種を絞り込み(2品種)、栽培技術を蓄積▽園地ごとの農家管理を徹底▽こうして事業利益(黒字)のうち28%を農業関連事業によって稼ぎ出している。
《ニーズに対応した生産・販売》
◆JA帯広かわにし(北海道)
長イモ生産に強い農協が近隣農協と連携して産地・ブランド形成と通年出荷の体制を構築▽各農協分の長イモ種子を一元管理・供給▽国内では安値の太物が逆に台湾、米国など海外では好まれていることから、ニーズに合わせて規格を選別した多元的な販売を展開し
ている。
◆JAはが野(栃木県)
旧農協単位の生産部会を統一し、栽培技術や販売体制の格差を解消▽販売企画専門部署を設け、規格の簡素化・小型パック需要・週末特売に合わせた変則出荷に対応▽ユーザーの売価設定に合わせた独自品位規格を提案▽選別作業の共同化も進めた。
◆JA相馬村(青森県)
相対の商談で大手スーパーや小売業者約40社と連携し、通年でリンゴ売場を確保▽そこに適時・適量を供給して、市場価格よりも高い農家手取り価格を実現▽平成3年の台風で落ちたリンゴを販売した努力などで組合員との信頼関係を構築し、共販率は90%以上。
《商品開発・ブランド確立》
◆JA氷見市(富山県)
農協の子会社が、転作のハトムギを農家から買い取り、金沢大学と共同開発(特許取得)したハトムギエキスを主原料とした飲料「透白美人」を22年に発売▽JAだけで完結できない部分は積極的に大学と民間企業の力を活用した▽ハトムギを販売した生産者の手取りは市場価格の約2倍。
◆JA四万十(高知県)
仁井田米ブランドとして販売するため、農協が買取販売を実施▽農協職員は県内での新規顧客の獲得に努めている▽12年に食味計(玄米測定)を導入したが、20年産からは買取代金の加算措置にも活用▽これまでに食味値85%以上で100〜300円/30kgの加算をした。
◆JAみやぎ登米(宮城県)
時宜を得た大胆な設備投資による環境保全米生産の迅速な普及と効率化を実現した▽土地に応じた生産基準の設定や生産履歴記帳による環境保全米生産の実効性と信頼性を確保した▽そして卸と連携し登米産米を消費者にアピールした。
《直売所》
◆JAおちいまばり(愛媛県)
直売所の「さいさいきて屋」は小規模からスタートしたが、採算性を検証して規模を拡大。10年後には売上げを10倍に伸ばした。22年の売上げは約20億円▽農商工連携の拠点機能も活発。地元食品メーカーへの製造委託による商品化は80種類(ハム、ソーセージ、コロッケなど)。
◆JA紀の里(和歌山県)
直売所「めっけもん広場」の販売高は現在26億円で全国屈指。出店後10年で販売高を2倍に伸ばした▽端境期で地元産が不足する場合は他県のJA直売所と連携・補完できるシステムを構築(31JA)▽体験交流施設では生産者や食育ソムリエが農産物の作り方、選び方などを教えている。
《農業経営》
◆JA北つくば(茨城県)
耕作放棄地や引き受け手のない農地を活用し、農協自らが農業経営をしている▽地域に合った新規作物を導入するため23年は試験的に6品種のネギを栽培した▽遊休農地などの掘り起こしと、担い手への優先的な紹介なども進めている。
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