11月20日の日米首脳会談で野田首相は日米間の事前協議を加速させる考えを示した。ただ、米国では自国経済に大きな影響を与える「財政の崖」への対応、農業法の失効などの課題が山積しているほか、新政権ではクリントン国務長官やカークUSTR代表が退任する見通しで、オバマ政権が通商政策に本格的に取り組むには時間がかかるとの見方がある。
しかし、一方でアジア重視の姿勢を打ち出してきたオバマ政権はTPPをてこにアジアで米国主導の自由貿易圏の確立をめざしていることには変わらず、JA全中は今後、日本へのTPP交渉参加圧力が強まるものと想定される、と分析、今後の動向を見極めるとともに、総選挙後の政権の枠組みが今後のわが国の交渉参加判断に大きな影響を与えることと認識し、選挙期間中に各党のTPPの考え方を注視する必要があるとしている。
JA全中は選挙前後の情勢を見極め来年1月の理事会で当面の運動の進め方を決める予定にしている。
主要政党が公表している選挙公約等でのTPPに関する考え方は以下のとおり。
【民主党】
アジア太平洋自由貿易圏の実現をめざし、その道筋となっている環太平洋パートナーシップ、日中韓FTA、東アジア地域包括的経済連携を同時並行的にすすめ、政府が判断する。その際、国益の確保を大前提とするとともに、日本の農業、食の安全、国民皆保険などは必ず守る。
【自民党】
○政府が聖域なき関税撤廃を前提にする限り、交渉参加に反対。
○自由貿易の理念に反する自動車等の工業製品の数値目標は受け入れない。
○国民皆保険を守る。○食の安全安心を守る。○国の主権を損なうようなISD条項は合意しない。
○政府調達・金融サービス等はわが国の特性をふまえる。
【日本未来の党】
TPPは単なる自由貿易協定ではない。牛肉など食品の安全基準、医療保険などすべてをアメリカのルールに合わせようというもの
だから交渉入りに反対。
【公明党】
○事前の協議内容が公開されず十分な国民的な議論もできていない。○TPPは包括的な経済連携協定であり、貿易や農業のみならず医療、保険、食品安全など広く国民生活に影響を及ぼすため、国会に調査会もしくは特別委員会を設置し十分審議できる環境をつくるべき。
【日本維新の会】
○TPP交渉参加、ただし国益に反する場合は反対。
【みんなの党】
○経済分野ではTPPの速やかな交渉参加、CEPEA(東アジア包括的経済連携構想)の交渉推進を図る。同時に、EU等アジア以外の国や地域とのFTA・EPAを推し進める。
【日本共産党】
○TPPは「例外なき関税ゼロ」を大原則にしている。「守るべきものは守る」交渉などありえない。TPPに参加しないことが食料自給率を向上させ農林漁業と農村を再生させる道。
○TPPは「非関税障壁の撤廃」も大原則。参加すれば農林水産業やその関連産業で約350万人もの就業機会が奪われると試算されている。「成長戦略」どころか雇用と地域経済、内需に大打撃。
○TPPに絶対反対を貫く。
【社民党】
○国民がきちんと判断するための情報すら野田政権は満足に公表していない。
○各国の食料主権に反し、自然資源や生態系を壊し持続可能な農林水産業や地域社会の崩壊など、国の基本を投げ出す戦略なきTPP参加は断じて認められない。
【新党大地】
○TPPは一次産業だけでなく、金融、保険、商業等すべての業種がアメリカの支配となる。日本の文化を守るため、断固反対。
【国民新党】
○食糧自給力、医療、教育、通信等、基幹産業、知的所有権保護の観点から現状のTPPには反対。
【新党改革】
○参加した場合の影響について十分な情報開示を行うこと、弊害の出る分野があれば対策をしっかり行うこと、国益を十分に守ることを前提として「交渉参加」を慎重に検討。
【新党日本】
マニフェスト2012には具体的な記載なし。田中康夫代表は総選挙に向け「国民不在な『大増税・TPP・放射能』の迷走に象徴される、間違いだらけな大政翼賛政治を刷新」とのコメントを発表している。
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