◆「支店を中心にした活動」は根本的問題
10月の第26回JA全国大会で「次代へつなぐ協同」が決議された。その中では、JA支店を拠点にした地域密着型事業運営がうたわれていたが、JAによって支店のあり方はさまざまあり、また、これまで多くのJAが支店の統廃合を進めてきた経緯もあり、現場には戸惑いの声もある。
今研究会では、こうした課題について田代洋一・大妻女子大学教授による問題提起と、JA上伊那(長野)、JA周南(山口)の2JAによる取り組み事例の報告があった。
研究会の梶井功会長は、「そもそも支店を拠点化、というのはどういう意味か。協同組合運動は元々地域に根ざしたものであり、支店を中心にするというのは、いわばその活動の根本的な問題にかかわるテーマだ」として、2JAの事例を学び、認識を深めたいとあいさつした。
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(左から)田代教授、下村篤・JA上伊那常務理事、金子光夫・JA周南経営管理委員会会長
◆支店にかかわる4つの問題提起
この日、事例報告をしたJA上伊那は、アルプスに囲まれた山間の管内で8つの営農センターを中心に、全16支店中12支店を総合支店として地域の活動拠点としている。一方、JA周南は全事業における信用共済事業の割合が8割を超え、全18支店が金融店舗であるというように、まったく経営環境が異なるJAだった。
参加者は、それぞれの環境に応じた課題について意見を交わし合うとともに、自らの地域の問題点なども交えつつ、今後の支店拠点化をどうするかについて活発に議論した。
田代教授は、「支店拠点化は、従来路線の延長なのか、または方向転換なのか、という議論があるが、支店を拠点にするという方向性自体は正しい」と前置きした上で、それを進める上での現状の問題点として、?支店の地域範囲はどの程度が妥当か、?支店の機能・役割とそれを支える人材育成はどうすべきか、?支店要員の適正規模はどの程度か、?同じ協同組合である生協は首都圏を中心に超巨大単協を組織しつつあるがその中でJAが支店拠点化を打ち出す意義とは何か、という4点を「今後の課題にしたい」と問題提起した。
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