5.土壌ち密度(土壌硬度)
土壌のち密度は、現場では前述のように山中式硬度計で簡単に測定できる。計測値が20mm以上で伸長が低下し、25mmを超えると根が伸長できなくなり、29mm以上のような硬い層を硬盤層と呼ぶ。
本格的には1m程度の穴を掘って調べるが、実用的には60cm程度で充分である。硬度計を平らに削った土壌断面に直角に押し当て測るが、深さ別にそれぞれ3カ所以上を測定し平均値で判定する。目標は18mm以下で、18〜20mmがどこの深さまで達しているかで有効土層や有効根群域を判定する目安となる。特に、根菜類の圃場にとっては重要な診断項目である。
6.土壌の空気と通気性
土壌中の空気は表1のように酸素が少なく、二酸化炭素が多い。それは、土壌中には多くの微生物を含めた小動物と作物の根が呼吸しており、酸素を吸収して二酸化炭素を出しているからである。
通常、大気と土壌中のガス交換の多くは拡散作用(濃度勾配)で行われるため、二酸化炭素は濃度の高い土壌中から大気へ、酸素は濃度の高い大気から少ない土壌中へと相互移動する。
この拡散の速度は、孔隙量の2乗に比例するため、孔隙率が高い土壌ほどガス交換が良いことになる。そのため前述のように団粒構造が発達している土壌は大孔隙が多くなり、排水性とともに通気性も良いわけである。
強い雨や度重なる灌水によって地表面の団粒が壊れて、粒子が細かくなり孔隙の中に入り込み目詰まりのような層を形成するが、これをクラスト層と呼ぶ。
クラスト層ができると大気と土壌とのガス交換が妨げられる。マルチ栽培や雨よけ栽培は、直接雨が当たらないためクラスト層ができにくく、通気性を良好に保つためには効果的である。
一方、水田は田面水があり水を介在するため、酸素を土壌に供給する効率は極めて悪い。水は酸素を吸収するが微量であり、停滞するとガス交換が十分行われないで酸素欠乏になり還元状態になりやすい。
通常、水田では中干しが行われるが、根に酸素を供給するためである。また、土壌改良資材として転炉滓が使用されるのは、酸性改良やケイ酸の供給もあるが、酸化鉄によって根圏が還元状態にならないようにするためである。
また、水田では、激しい雨が降ると稲が元気になる現象がよくみられる。これは、酸素を含んだ新鮮な雨が、酸素不足の田面水と入れ替わるからである。
宮沢賢治は、神社の鳥居の注連縄(しめなわ)と紙垂(しで)を「雲」と「稲妻」と称したらしい。現代のように簡単に窒素質肥料が確保できない時代であり、稲妻が発生すると空気中の窒素を土壌に養分として供給するともいわれ、加えて新鮮な酸素が供給されることで稲が元気になり生産性に影響したことを感じさせられる。
現在でも、雷(稲妻)が落ちた場所、特に水田等では、青竹で囲い注連縄に紙垂を垂らして五穀豊穣を願う習慣が行われている地域もあるようである。
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※吉田吉明氏の姓「吉」の字は、常用漢字で掲載しています。
【著者】吉田吉明コープケミカル(株)参与 技術士