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信用・共済分離論を排す

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「JA綱領」を読み解く その3

・ICA声明と組織運営の三つの要素
・JAの経営理念

 前回述べた、(1)「総合JAの経営組織モデル」、(2)組織運営の3要素(理念・特質・運営方法)の2つの切り口をもとにして「JA綱領」を観察すると、「綱領」の持つ意味が見えてきます。

◆ICA声明と組織運営の三つの要素

 前回述べた、(1)「総合JAの経営組織モデル」、(2)組織運営の3要素(理念・特質・運営方法)の2つの切り口をもとにして「JA綱領」を観察すると、「綱領」の持つ意味が見えてきます。
 結論から言えば、「JA綱領」とは、全国共通JAの経営「理念」であり、その理念を実現するための協同組合原則で謳われている協同組合の「運営方法」を述べたものです。
 さらに詳しく「綱領」を見ると、次のようなことが分かります。
 「綱領」の前文では協同組合の定義・価値・原則につて触れています。これは「綱領」が、全体として現在の「95年ICA声明」の考えをもとにつくられ、JAはここで掲げられている、協同組合の(1)「定義」(2)「価値」(3)「原則」によって運営されるべきことを宣言しています。
 これを組織運営の3つの要素との関連で見れば、(1)「定義」=「特質」、(2)「価値」=「理念」、(3)「原則」=「運営方法」と考えることが出来ます。
 ICA声明では、協同組合について、はじめて「定義」、「価値」、「原則(指針)」の3つの側面から述べることにより大きな注目を集めました。しかし、これらの内容が組織運営の基本要素である「理念」、「特質」、「運営方法」とどのように関連するのかについては明らかにしていませんし、研究者の間でもこのような解釈に関心を持つ人は少ないようです。
 筆者独自の解釈によれば、ICA声明で掲げられている(1)価値、(2)定義、(3)原則は、組織運営の基本要素との関連で見れば、それぞれ(1)「理念」、(2)「特質」、(3)「運営方法」にあたります。
 とくにこのうち、耳慣れない「運営方法」は、われわれが通常理解している協同組合の7原則((1)自主的で開かれた組合員制、(2)組合員による民主的な管理、(3)組合財政への参加、(4)自主自立、(5)教育・研修、広報、(6)協同組合間の協同、(7)地域社会への係わり)を意味しています。また、「綱領」の前文の後半では、民主的で公正な社会の実現とJAの社会的役割について述べています。


◆JAの経営理念

 次に、「わたしたちは」として5項目の内容が掲げられていますが、その項目のなかで、「地域農業の振興」や「地域社会の構築」さらには「組合員の協同の成果の実現」や「生きがいの追求」と言ったJAの理念を述べています。
 これを「総合JAの経営組織モデル」の観点から見れば、前の2つがJAの持つ2つの事業領域(農業振興と総合事業の展開)の強化であり、後の2つがJA組織の目的を意味しています。つまり、「綱領」では、前文で抽象的な協同組合の理念を謳い、項目の中でそれを具体化したJA組織の目的や事業領域の強化を謳ったJAの理念を述べているのです。
 協同組合の基本的価値(組織理念)として、ICA原則では、自助・自己責任・民主主義・平等・公正・連帯といったことが述べられていますが、それらの内容は、あまりにも抽象的であり、JAではそれを具体化して「地域農業の振興」や「地域社会の構築」、さらには「組合員の協同の成果の実現」や「生きがいの追求」と言ったJAの理念を述べているのです。
 さらに、項目のなかで、JA理念を実現して行くために、組合員の「参加と連帯」や「自立・自主」と「民主的運営」、さらには「教育」などの協同組合原則(運営方法)が必要なことを述べています。

【著者】福間莞爾
           総合JA研究会主宰

(2011.11.16)