(写真)農業の魅力を発信したいと若手農家も参加する「田んぼアート」
◆育つ若い農業者たち
安城産業文化公園「デンパーク」の近くの水田に色鮮やかな「田んぼアート」がある。田植えは5月19日。親子連れや安城農林高生など一般参加者500人、スタッフ200人で黄色、黒など色とりどりの苗を植えた。
生育が進むに連れ、浮かび上がってきた絵柄には「日本デンマーク ANJO」の文字(写真)。昨年は「いつか いっしょに笑おう」と東日本大震災の被災者への励ましのメッセージを描いた。
7月28日はここで「植えディング」と称して3組の結婚式を行う。当日はケーキの代わりに安城の郷土料理、箱寿司を畳2枚分の特大サイズで用意する予定だ。
この取り組みは今年で6年め。農産物の取引先である加工業者や生協なども巻き込んで、田植えや収穫を行う。一緒に楽しめる活動を通じて交流し心の通った食と農の信頼関係を築くのが目的だ。
「地域には若い農業者がかなり育っている。彼らの力を何かのかたちで発信できないかと考えました」と田んぼアートの仕掛け人でチンゲンサイを主力品目にしている石川和明さん(60)は話す。
◆営農組合を核に農地を集約
JAあいち中央は集落営農の先進地として知られる。24年前に安城市農協時代に打ち出した「集落農場構想」がそれだ(イラスト)。
工場の進出によって兼業農家が増える一方、専業的な農家にも高齢化が進むことを見据え、集落全体の農地を効率的に利用し、地域農業を担う農業経営者を育てていこうという考えだった。具体的には集落に営農組合をつくり、米、麦、大豆といった土地利用型農業の大規模経営を実現する。営農組合の構成員は地域によって異なるものの3人〜5人程度。これを「やりがい農業」と位置づけ、女性や兼業、中高年者の野菜づくりなどを「たのしみ・いきがい農業」、そして農業体験や交流を行う「ふれあい農業」と集落の農地利用の計画的な棲み分けをめざしてきた。
石川さんは赤松営農組合の構成員で集落の農業を担ってきた。15年前から収益を上げるために米のほかにチンゲンサイのハウス栽培を始め、1年に8、9回も収穫、10人をパートで雇うなど雇用も生み出している。
その石川さんが「若い農業者が育っている」というのは、こうした営農組合の構成員が次の世代へとバトンタッチされているということなのである。
◆切磋琢磨で経営を伸ばす
農事組合法人「耕福」は福釜地区で昭和55年に設立された営農組合である。代表理事は石川正男さん(52)。斉藤卓さん(58)、清水仙也さん(53)とともに経営を続けてきた。
集落全体の農地面積は180ha。「耕福」の24年度の作付けは、米40ha、麦33ha、大豆27ha、そば2.6haなど。設立当初はハウスでのキュウリ栽培も行っていたが平成10年に耕種部門に一本化した。これだけの面積と品目だから「1年中、仕事はある」と石川さんたちは話す。
最近では栽培したそばを業者と提携してそば粉や乾麺にして販売したり、そば打ち教室を開くなど新たな取り組みも始めた。
また、5年前からは斉藤さんの長男、泰さん(27)が従業員として働いている。農機メーカーに1年勤務した後、父親たちの姿を見て「農業をやりたい」と転職した。
「耕福」のモットーは「地域とともに躍進する農業経営」だ。地域の農地を守るというのが原点。後継者の確保が重要なのも「もし次世代に引き継げなければ、これまで自分たちを支え農地を預けてくれた集落の人々が困ってしまう」からだ。
福釜地域には石川さんたちよりも先に設立された営農組合がもうひとつある。その営農組合から「後継者としてグループを組むなら応援するぞ」と声をかけられたのがきっかけだ。今はその営農組合も世代交代し全員が40代だという。
石川さんたちは「お互いに切磋琢磨でやっていこうと考えています」と話す。6次産業化など経営の高度化も今後の課題だというが、地域とともに、の原点は忘れない。
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農事組合法人「耕福」のみなさん。左から清水さん、斉藤さん、石川さん、斉藤泰さん
◆直売事業で多様な農家を支援
一方、女性や兼業農家などに活躍してもらう場としてJAが力を入れているのが管内に12ある直売所だ。
管内でもっとも広い「グリーンセンター安城北部」を訪れると野菜や果物、花など地元の新鮮な農産物を求める買い物客でにぎわっていた。出荷者として登録しているのは400名を超え、毎日280人ほどが朝7時から出荷に来る。年間の売上げは約8億円。8割が地域の農産物で占める。
出荷者には希望をすれば自分が出荷した農産物の売れ具合を携帯メールで知らせてもらうこともできる。複数の直売所を掛け持ちして出荷する人も出てきたが、このメールサービスを翌日の出荷計画に役立てているという。
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地域の消費者でにぎわう直売所。農業の魅力を発信する大切な拠点だ
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JAあいち中央の取り組みは「やりがい農業」と「いきがい農業」の棲み分けと連携だ。いきがい農業といっても販売では「地域」に焦点を当て産直を重視。石川組合長は「自分で作ったものを自分で販売することはいきがい農業にとっても重要」と話し、多様な人々が元気な農業を営む姿をめざす。
「耕福」の石川さんはこうした集落ぐるみで営んでいる「農業の魅力をJAがもっと地域に伝えてほしい」と期待していた。
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