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遺伝子組み換え農産物を考える

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積極的にGM作物を推進するお隣のバイテク大国

・耕種作物だけではなくGM動物も視野に
・農業部がコントロールする体制に
・未承認GMイネの作付けが拡大

 私たち日本からもっと近いバイテク大国は、太平洋の向こうの米国ではなく、近くて遠い国・中国だ。
 先日、国際アグリバイオ事業団(ISAAA)が発表した2011年のGM作物栽培面積によると、中国の栽培面積は10年より40万ha増え390万haで世界6番目の「GM作物の栽培大国」だという。
 米国、EUに続いて中国の現状について立川雅司茨城大学教授のお話を中心に見てみる。

◆耕種作物だけではなくGM動物も視野に

積極的にGM作物を推進するお隣のバイテク大国
 立川教授によれば、中国は、自国民の人口を養うために、ハイブリッド・ライスなどの食料生産における新しい技術を積極的に採用してきている。GMOに関しても、食料生産への期待感から、早くから注目し、研究開発投資を進めてきている。特に、08年7月には、食料問題の解決のために、今後12年間で35億ドル(240億元)を投資(政府が50%、企業や研究機関が50%拠出)し、GM作物の研究開発を進めると発表した。
 この研究プロジェクトは「遺伝子組換え生物新品種育成重大プロジェクト」と呼ばれ、イネ、小麦、大豆、トウモロコシ、ワタ、アブラナの育種をGM技術で進めると共に、耕種作物だけではなく、牛・豚・家禽・魚などのGM動物の開発も含まれている。
 ISAAAの調査では、これまではワタが主な作物であった。この点は「当面変化しないと考えられるものの、数年先にはさまざまな作物や動物が商業生産に入ることも考えられる」という。
 09年にはBtイネ(インディカ種)とフィターゼ・トウモロコシに対して、農業部は安全証明書を発行した。中国の制度では、安全証明を発行したのち、生産用の品種登録という手続きが必要とされるため、引き続きこの手続きが進められているとみられるが、Btイネに関しては、商業化の見通しは現在のところ不明だという。

遺伝子組換え抗虫綿花の栽培地域


◆農業部がコントロールする体制に

 中国における遺伝子組換え生物の規制は、01年から02年にかけて整備された。具体的には01年5月に国務院令「農業遺伝子組換え生物安全管理条例」が基本法として制定され、この条例のもとで02年1月に農業部により、(1)「農業遺伝子組換え生物安全評価管理規則」、(2)「農業遺伝子組換え生物輸入安全管理規則」、(3)「農業遺伝子組換え生物表示管理規則」が制定され、基本制度が整った。
 中国では基本的には、「農業部が試験栽培から安全性認可まで、また輸入安全審査や表示制度なども含めて、多角的にコントロールする仕組み」だといえる。魚や動物も「食用である限り農業部の所管」であり、農業部が関与しないのは林木など一部に過ぎないという。
 安全性審査の制度については、研究開発から、野外試験(中間試験→環境放出試験→生産性試験)、安全証明発行まで、5ステップを順次たどることによって安全性を担保するとともに、各段階でのリスク評価に関しては、専門家などで構成される「国家農業GMO生物安全委員会」が審査を行っている。

中国の遺伝子組換え抗虫綿花の栽培面積の推移
◆未承認GMイネの作付けが拡大

 隣の国・中国で遺伝子組換えをめぐる政策や研究開発がどのように進みつつあるのか、直接食料を輸入している日本としては大きな関心を払うのは当然だといえる。しかし「その実態に関しては、十分明らかではない点もみられる」。中国におけるGMO研究開発は非常に活発化しているもののその全貌は情報不足のために不明な部分が多いと立川教授はいう。それは中国政府の「情報公開が十分進んでいない」ことと「政策と運用の乖離が見られる」からだ。
 例えば10年4月5日付「中国新聞周刊(China Newsweek)」誌は、「湖北省などを中心として、未承認のGMイネの栽培・流通が拡大している」という特集記事を掲載した。中国では「研究者は自ら経営する種子会社での種子販売が許可されており、またその利益は個人所得になるため、積極的に新しい品種を開発・販売しようというインセンティブが働いている」という。そのため「武漢周辺の水田には04年ころからGMイネが栽培されており、農家も十分認識しないでGMイネの種子を購入し栽培してしまっている可能性がある」という。
 実際にどの程度の量のGMイネ種子が流通しているのかは不明だが、同誌によれば「05年時点で、約1560〜1939ha分の播種面積、生産量として1万1700t〜1万4500t相当が流通しているのではないか」と推測しているという。そしてこうした作付面積は「急速に拡大しつつある傾向にある」と推測されている。
 こうした米を原料とした加工食品がEUに輸出され、EUで大きな問題になったことは記憶に新しい。

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 このような国内管理(特に未認可GM作物の流通防止)の徹底や、日本やEUなどGM作物(加工食品も含めて)の想定される輸出先国への認可申請が一切行われていないなど、中国における「政策上の課題が多々残されている」。
 こうした側面についても「国際的な政策連携や対話が緊急に求められているといえる」と立川教授は指摘する。
 近くて遠い中国は自給率達成目標が50%というわが国にとって、おそらくこれからも食料を依存しなければならない国だといえるのだから、中国のGM作物栽培の動向に日本国として大きな関心を持つっていく必要があるのではないだろうか。

近年の遺伝子組換え生物に関わる重要政策

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