◆最近になって分かってきた効能
昔、学校で習ったビタミンAやB、C、Dはともかく、Eはよほど健康に関心のある人でないと、その効能については詳細をご存じないのではないでしょうか。
ところが日本人の寿命が伸びるにつれてEの重要性は年ごとに高まっています。そこで今日は、いつまでも若々しく、かつ健康でいられるために重要な役割を果たすEについて考えてみましょう。
実はEの性質、効能がわかってきたのはごく最近のことで、今でもまだわからないことが多いのです。ですからEの重要性は今後さらに高まっていくでしょう。
辞典にはこう解説されています。「抗不妊症ビタミンとして発見された脂溶性ビタミン。しかし近年もっと広範な作用を有することが明らかになってきた。即ち過酸化脂質の生成を抑制している。」(『食辞林』樹村房)
過酸化脂質というのは健康の大敵で、生体膜を破壊して動脈硬化、肝機能障害、糖尿病その他を引き起こします。
◆老化を防止するビタミン
金属の酸化はサビ、金属表面の腐食ですから普通はサビ止めをしますが、体内での酸化作用は目に見えないので軽視してしまいがちです。
体内では過酸化脂質、活性酸素(フリーラジカル)というような細胞を傷つける物質の発生を極力防がなければなりません。
その役割を果たすのがビタミンAやCやEなのですが、Eはそのおかげで生体膜が若く保たれることで老化を予防することから「老化防止のビタミン」とも呼ばれています。
皮膚のシミは多く過酸化脂質のせいだそうですから、たとえはよくないけれど金属のサビと似たようなものといえなくもありません。
細胞の機能を健康的に保てるということはガンの抑止にもつながることになります。昔、愛読したK・N・プラサド著『ガンはビタミンで治る』には特にCとEをたっぷり摂取することでガンを克服できることが詳述されていたことを思い出しました。
◆植物油やナッツ類に豊富に含まれる
それではEは何に多く含まれているのか。「食品成分表」からは植物油、胚芽、豆類、緑黄色野菜がEの宝庫であることがわかります。
なかでも大豆油、コーン油、ゴマ油など植物油に豊富に含まれています(当連載の第32回で植物油を取り上げました。念のため)。
胚芽にも多く含まれていて、全粒粉パンや胚芽米、オートミールなどが該当食材です。これらを食べる機会がない人は胚芽酵素、コエンザイムQなどサプリメントを利用するのもよいでしょう。
ナッツ類もEが豊富で、特にアーモンド、松の実、ピーナッツなど。カボチャ、キンカンもいいです。
肉類にはEはほとんどないので、肉食動物が短命なのはE不足が影響しているのかなどと空想してしまいますが、魚介類には結構含まれています。特に多いのはウナギで、タラコ、鮎、シシャモ、マグロ、サンマなどが続きます。
Eの吸収率は、他のビタミンと一緒の時のほうが高いことがわかってきました。ですから野菜は植物油で炒めるとか、うな丼の前に野菜ジュースを飲むとか、緑黄色野菜のビタミンABCと組み合わせるようにするのも一案でしょう。
医学書によると、Eの薬理効果には次のようなものがあります。動脈硬化、心疾患、肝疾患、糖尿病、脳卒中、不妊、膠原病、更年期障害、血栓、関節炎、喘息、うつ、老人性痴呆。
これらの症状には100〜600ミリグラム(mg)のEが投与されますが、厚労省の摂取基準は大人一日8〜10mgにすぎません。
とはいえE1mgは、シシャモ1匹、ピーナッツ10粒、コーン油小匙1杯、胚芽米茶碗1杯、カボチャ25グラムほどで、合計これでやっとE5mg。ということでEを多めにとるようにすることで、今年はE(いい)年でありますように。
経済倶楽部理事長