娘の婿さんJ君が結婚を機に、農業をやりたいと言い出した。土地も資金もない彼に農業で生計が立てられる未来はあるのか。当面の生活については、娘が看護師の資格を取り、しばらくの間は髪結いの亭主で凌ぐことで、新規就農がスタートし、3年目に入った。
農地については、地域もご多分にもれず、担い手不足や高齢化により、借りることは容易である。借地は5km、4カ所以上に分散しているものも、合計すると1haを超える。親からの僅かばかりの資金援助を元に、トラクターを購入し、育苗用のハウスや井戸などを、わが家の近くに整えて、1人で頑張っている。最小限の資本の投下のため、収益性の低い露地栽培が中心で、冬のネギ、春のソラマメ、夏のカボチャ、秋のサツマイモなどを生産し、法人経営の直売所に出荷している。収益が計上できるのは、もう少し先である。
これからの農業を目指すこのような若者が、今のわが国の社会構造のなかで、本当に経済的に自立していけるのか、確信はない。諦めないで地道に地域の信頼が得られるよう頑張って欲しい。消費者には、わが国の農業を育てるために、生産者が再生産できる価格を支持して欲しい。国には、農業を基幹産業として位置付け、優良農地が都市開発などに転用されないように守ること、そして何よりも訴えたいのは、厳しくとも安心して農業が続けられるよう、生活の基盤となる教育・医療などの社会福祉制度の充実である。
財団法人 日本植物調節剤研究協会会長