◆長期化する売上げ不振
この調査は2010年1月から12月の外食産業の倒産(負債1000万円以上、法的整理のみ)について、TDBが集計・分析したもの。
これによると、図1のように10年の外食倒産件数は623件、負債総額は614億9600万円で、前年に比べれば件数も負債総額もやや減少はしているが、件数は08年から3年連続して600件を超える高水準で推移している。
(社)日本フードサービス協会によれば、10年の外食産業の年間売上高は前年比0.9%増と新規店を含めた全店ベースで2年ぶりに前年を上回った(※関連記事)。だが、客単価は同2.1%減と、「消費者の低価格志向が顕著」となり「各業態で価格競争が激化」し「一部の大手チェーン店などに消費者の支持が集まり…多くの飲食店では厳しい経営状態が続いている」と分析している。
また、「ガソリン価格の高騰や“巣ごもり消費”の浸透などで外食の頻度の減少や原材料高の影響から、外食産業の倒産は06年から増加基調が続き、さらに08年以降はリーマン・ショック後の不況を受け、売上げ不振が長期化している」とも指摘している。
◆「居酒屋」の倒産が過去最多を記録
図2は、業態別に構成比をみたものだが、「居酒屋」が全体の3分の1を占め、10年は件数で201件と過去10年間で最多の件数となっている。「居酒屋」は、07年9月から飲酒運転に対する罰則が強化されたことや大手チェーン店との低価格競争などが影響して高水準での倒産が続いているという。
また「西洋料理店」(10年71件、前年比34%増)、「中華料理店」(同88件、同21%増)も「増加が目立ち、最多を記録した」。
地域別では、「近畿」が216件でトップ、次いで「関東」が215件と、この2地域で全体の7割を占めている。「関東」「中部」(78件)「九州」(41件)の3地域は過去10年で最多を記録。「都市部を中心に高水準での推移が続いている」。
倒産の主因別では、売上不振、業界不振などを主原因とする「不況型」が521件と全体の83.6%占め「初めて80%を超えた」。不況に夜客数と客単価が減少したため、店舗賃貸料や出店・改装にともなう借入れなどが負担となり倒産するケースが多いという。
◆零細企業が経営危機に
表1は「資本金別」にみた倒産件数だが、「個人」が232件・37.2%、「1000万円未満」が268件・43%と零細企業が8割を占めている。
また、表2は「負債総額別」にみた倒産件数だが、「5000万円未満」が449件で全体の7割強を占め、小規模倒産が多いことを示している。
こうしたデータをみると、零細企業が、長引くデフレなどによる都市部を中心とした大手チェーン店による低価格競争の激化などの影響をまともに受け経営危機に追い込まれているという印象を強くする。
◆小麦など原材料費高騰で今後も不安が
TDBによれば、今年に入っても、1月は前年同期比34.7%増の66件が倒産し、2月10日には居酒屋「ちゃんと。」「橙家」など全国に36店舗を展開する「ちゃんと」(東京都、負債総額36億円強)が民事再生法を申請するなど「依然落ち着く様子は見られない」という。
さらに今後は、小麦粉・砂糖・油・コーヒーなどさまざまな「原材料価格高騰の影響も懸念される」ので「このまま消費者の外食離れが続くようであれば、外食産業の倒産は引き続き高水準での推移が見込まれる」という。