◆好調を持続し続けるCVS
図1は、昨年1月から12月までの業態別売上高の前年(10年)同月対比をグラフにしたものだ。
これをみると3月11日の東日本大震災と東電福島第一原発事故の影響を最も直接的な受けたのは、百貨店(3月の前年同月比85.3%)と外食(同89.7%)だといえる。
外食は9月にほほ前年並み水準に回復し、10月以降は前年水準を上回るまでに回復するが、百貨店は11月まで前年水準を回復することができなかった。
そうしたなか唯一好調だったのがCVS(コンビニエンスストア)で、9月を除いて毎月前年実績を上回った。唯一前年水準を下回った9月も、前年(10年)9月がタバコの値上げ直前の駆け込み需要で売上げが大幅に伸びたために、11年9月の前年同月対比の数字が96と▼4ポイント下がったもので、食品(日配)売上げだけを抽出した図2の9月をみれば分かるように、前年対比109.6%と食品は大幅な伸びを見せている。
◆高齢者にも見直された利便性
図2は前述のように食品だけを抽出したものだが、ここでもCVSだけが、毎月前年を上回る実績をあげている。
東日本大震災では東北などの被災地だけではなく、CVSの利便性・簡便性が見直され、従来の若い人を中心とした客層から、50歳以上の年齢層の利用が増えている。各チェーンとも品揃えなどで独自性を打ち出すとともに、さらなる出店構想を発表するなど、積極的なビジネス展開をはかっていくことにしている。
大塚明日本スーパーマーケット協会専務が本紙に語ったように食品スーパーなどにとって「これからの敵はCVS」といえるのかもしれない。
◆GMSの売上げの6割以上が食品
図3は量販店(総合スーパー:GMS)の1992年から昨年までの20年間の総売上高の推移(棒グラフ)と、売上げに占める食料品・衣料品・住関連商品の割合(折れ線グラフ)を示したものだ。
総売上は98年、99年の16兆8000億円台をピークに下降し、09年には13兆円を割り込み、昨年は10年よりはやや回復したが、92年から17ポイントも下回る12兆7000億円となった。
そのなかで注目すべきは、かつては売上げの6割近くを担っていた衣料品と住関連商品のウェイトが大幅に下がり、ここ数年両方合わせて3割を確保するのがやっとという状態になっている。住関連ではかつて6兆円近くあった家電製品売上げがここ数年1兆6000億円台に落ち込んでいることも目立つ。
その一方で食料品の売上げ比率は、99年に5割を超えて以降、年々ウェイトを高め06年には6割を超えるまでになった。
売上高も全体の総販売高が減少する中、92年の6兆6000億円台からほぼ8兆円台を確保するまでになっている。店舗構成としては、衣料品売場や住関連売場はあるが、限りなく食品スーパー(SM)に近づいていくのかもしれない。
その影響を受けてSMとCVSが顧客を奪い合うというように、まさに「食品」を中心にマーケットの争奪戦がいま以上に激しく行われるようになる予感がするがどうだろうか。
【図1】
【図2】
【図3】
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