暑い日々が続くなか、稲の収穫が始まった。
収穫作業を眺めながら田んぼを歩くと、稲穂の上に伸びたノビエの穂や矢じり葉のオモダカを見つけた。また、イボクサやキシュウスズメノヒエなどが畦畔から稲株の中に侵入しているのを発見した。今年の水田除草剤の使用を出荷量から計算すると一筆あたり約1.7回で、例年並みである。しかし、残草する雑草が年々多くなるように感じるのは気のせいなのだろうか。
(写真)稲よりも高く伸びたノビエは、収穫作業にも影響
◆現在の水稲除草剤主流は「一発処理剤」
現在、水田除草剤の主流は一発処理剤で、ほぼ作付面積に匹敵する量が使用されており、高葉令のノビエに効果があり、SU抵抗性雑草やオモダカ、クログワイ、コウキヤガラ、シズイなどの問題雑草への効果も求められている。また、省力散布製剤、田植同時散布など効率の高い作業性も求められている。
水田除草剤の使用実態がどうなっているのかを、除草剤の出荷量調査から解析し、SU抵抗性雑草が問題になり始めた10年前と比較した。
10年前の一発処理剤の製剤別使用割合は1キロ粒剤、フロアブル、3キロ粒剤、ジャンボ剤であったのが、現在では1キロ粒剤、フロアブル、ジャンボ剤、3キロ粒剤の順になった。ジャンボ剤の順位が上がりフロアブルの使用率も成長するなど、省力散布製剤の使用が増加している。
地域別にみると、フロアブルは北海道、関東地域で人気がある。ジャンボ剤は近畿、四国地域で人気があり、九州、東海地域でも徐々に増えている。1キロ粒剤は東北、北陸、東海、中国地域で人気が高い。3キロ粒剤は10年間で半減したが、関東、九州ではいまだ根強い人気だ。
次に、一発処理剤に含まれる成分数で見ると、10年前には2成分の剤が使用される割合は約20%、3成分が約50%、4成分以上が約40%であったが、現在では3成分が60%弱、4成分以上が40%弱で、2成分は5%程度しか使用されていない。低成分の除草剤が求められているが、実際には安定した効果が得られる成分数が多い除草剤が使用されている。
◆現場には除草効果と散布の省力性のニーズが
次は抵抗性雑草が現れたSU剤を主成分とする一発処理剤の使用について見てみよう。10年前には一発処理剤のうち95%がSU剤を含んでいた。現在は近畿、中国、四国地域のように90%を超える地域もあるが全国平均では85%に減少した。
SU抵抗性雑草が現れても、SU剤が含まれる一発処理剤を使用するのはSU剤が多種の雑草に効果があるという特徴を持つからである。それ故、SU雑草対策剤の多くはSU剤を含む一発処理剤にブロモブチド、ベンゾビシクロンなどの成分を加えた薬剤で、使用されている一発処理剤の86%を占め、東北や北陸では95%に達する。
一発処理剤への期待はSU抵抗性雑草をはじめ、多くの問題雑草に対する効果や散布の省力性であることが使用実態から解る。
一方、初期剤や中期、後期剤の使用状況はどうであろうか。
初期剤の使用量は10年前とあまり変わらないが、土壌混和剤がやや増加気味である。また、抑制タイプの除草剤の使用が多いなか、雑草を褐変化し枯殺するタイプの成分ピラクロニルの使用が増加している。初期剤には後処理まで安定した除草効果を保つことを求めるが、可視的な効果は満足感を高めるのかもしれない。
中期剤の使用量は年々徐々に減少してきたが、今年は増加に転じた。従来のシメトリン・MCPB剤だけではなく、高葉令のノビエやオモダカ、クログワイなどの問題雑草にも効果があるハイカット、ザーベックスなどの中期一発剤的な薬剤の使用が伸びている。
後期剤の使用は広葉やカヤツリグサ科雑草を対象に使用するバサグラン、2,4D、MCPAなどは10年前とほとんど変わっていないが、ノビエ防除剤はシハロホップブチルのほかに、新たに開発されたピリミノバックメチル、ペノキススラムを含む除草剤の使用が伸びている。また、10年前にはノビエと広葉、カヤツリグサ科雑草を同時防除できる後期剤はクリンチャーバスだけだったが、現在では新たに開発されたヒエクリーンバサグラン、クサファイター、ワイドアタックが使用を伸ばし、ワイドパワー、スケダチなど更に新しい薬剤が開発されている。
◆求められる高い性能と安全を考慮した農薬利用
以上のように、水田除草剤には問題雑草に対応する性能が期待されている。一方、環境保全や食品の安全を考慮した農薬の利用を求める声は少なくない。
今年から販売されたテフリルトリオンを含む薬剤は、2成分でSU抵抗性雑草をはじめ多くの雑草に効果がある。また、SU剤と同じ作用を持ちながらノビエやSU抵抗性雑草にも効果があるピリミスルファン、プロピリスルフロン、メタゾスルフロンなどスーパーSU剤が開発されており、成分数が少ない一発処理剤として登場するのが待たれる。
除草剤の適正使用を心がけ、問題雑草が現れないよう、新しい薬剤を大切に利用し育てたいものである。
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