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独裁者を目指す安倍首相2015年7月21日

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【森島 賢】

 安倍晋三首相は、15日午前の衆議院の委員会で「現在まだ国民の皆様のご理解が進んでいないのも事実であります」(衆議院審議のビデオライブラリ)と発言した。それから3時間も経たず、舌の根も乾かぬ正午頃には審議を打ち切り、安保法制案を強行採決してしまった。
 これは、民主主義を真正面から愚弄する暴挙である。その責任は、最終的に、政府の総理であり、与党の総裁である安倍氏が負うべきものである。
 安倍首相は、一強多弱の体制のもとで、ますます独裁的政治家への志向を強めている。

 首相は、次のように考えているのだろう。国民は無知蒙昧だから、理解が遅々として進まない。それゆえ、選良である政治家が判断して決める。それが、最善の結論を得る方法だ。そのように考えているのだろう。
 だが、そうではない。政府は、違憲の安保法制案を合憲だ、と言っている。だから、国民は理解できないのである。無知蒙昧だからではない。

 そういう政治家こそ、選良どころか、論理的な問答が出来ない無知蒙昧な輩なのである。だから、国会などで没論理的な説明を延々と続けている。だから、論理的な思考をする多くの国民には理解できない。いつまで経っても理解できない。
 多くの国民は、政府や与党の政治家が、自分自身の没論理に気がつき、撤回するまで、心優しく待っている状況である。
 それとも、政府や与党の政治家は、違憲を合憲と言いくるめようと企んでいるのかも知れない。そうなら、選良どころか、腹黒い政治家と言わざるをえない。どちらにしても、尊敬できる人物ではない。

 そのことと同様に、いや、それ以上に深刻なことは、首相が、民主主義の根本原理をわきまえていないことである。
 民主主義の根本原理を、あらためて説明しよう。民主主義は、ベスト(最も良い)な結論を得るための方法ではない。最もベター(より良い)な結論を得る方法である。最も多数の人が、より良いと考える結論を採る、という方法である。
 後から考えると、それはベストな結論でなかったかも知れない。しかし、最も多数の人たちが納得した結論だから、それがいい、と考えるのが民主主義である。

 こんどの首相発言は、この民主主義の根本原理を、真っ向から否定している。大多数の国民の理解を待っていても、せいぜい最もベターな結論しか得られない。この最もベターな結論より、オレが考えたベストの結論のほうが良い結論だ。このことに議論の余地はない。愚かにも、そのように自分勝手に思い込んで、自分の結論を国民に押し付けようとしている。
 これは、民主主義を否定し、独裁者を目ざす政治家の発言だ、と言われてもしかたがない。

 首相は、なぜ民主主義を否定したいのか。
 首相は憲法の平和主義を否定したいのだ。国際情勢が変化したという口実で「諸国民の公正と信義に信頼」(憲法前文)することをやめ、抑止力という名前の「武力による威嚇」(憲法第9条)を解禁しようとしている。それが安保法制案なのだ。
 しかし、大多数の国民は平和主義の否定に反対している。だから、民主主義を否定しないと、平和主義も否定できない。このことに、ようやく気づいたようだ。
 それなら堂々と独裁的で好戦的な憲法を提案すればいい。だが、そんな提案は、木っ端微塵に粉砕されるだろう。だから、それもできず、没論理で姑息な言辞を弄して、誤魔化そうとしている。

 この姿勢は、大多数の農村の人たちの反対を押し切って、財界やアメリカにとって不都合な農協、戦後の経済民主化のなかで、先人たちが勝ち取った誇り高い農協を、つぶそうとしている姿勢と全く同じである。
 また、この姿勢は、大多数の国民が反対しているのに、財界やアメリカにとって好都合なTPP交渉を、秘密裡に押し進めようとする姿勢と全く同じである。
 これら全てを、厳しく糾弾しなければならない。

(前回 独裁化する自民党

(前々回 ギリシャ問題にみる政治と経済

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