独裁者を目指す安倍首相2015年7月21日
安倍晋三首相は、15日午前の衆議院の委員会で「現在まだ国民の皆様のご理解が進んでいないのも事実であります」(衆議院審議のビデオライブラリ)と発言した。それから3時間も経たず、舌の根も乾かぬ正午頃には審議を打ち切り、安保法制案を強行採決してしまった。
これは、民主主義を真正面から愚弄する暴挙である。その責任は、最終的に、政府の総理であり、与党の総裁である安倍氏が負うべきものである。
安倍首相は、一強多弱の体制のもとで、ますます独裁的政治家への志向を強めている。
首相は、次のように考えているのだろう。国民は無知蒙昧だから、理解が遅々として進まない。それゆえ、選良である政治家が判断して決める。それが、最善の結論を得る方法だ。そのように考えているのだろう。
だが、そうではない。政府は、違憲の安保法制案を合憲だ、と言っている。だから、国民は理解できないのである。無知蒙昧だからではない。
◇
そういう政治家こそ、選良どころか、論理的な問答が出来ない無知蒙昧な輩なのである。だから、国会などで没論理的な説明を延々と続けている。だから、論理的な思考をする多くの国民には理解できない。いつまで経っても理解できない。
多くの国民は、政府や与党の政治家が、自分自身の没論理に気がつき、撤回するまで、心優しく待っている状況である。
それとも、政府や与党の政治家は、違憲を合憲と言いくるめようと企んでいるのかも知れない。そうなら、選良どころか、腹黒い政治家と言わざるをえない。どちらにしても、尊敬できる人物ではない。
◇
そのことと同様に、いや、それ以上に深刻なことは、首相が、民主主義の根本原理をわきまえていないことである。
民主主義の根本原理を、あらためて説明しよう。民主主義は、ベスト(最も良い)な結論を得るための方法ではない。最もベター(より良い)な結論を得る方法である。最も多数の人が、より良いと考える結論を採る、という方法である。
後から考えると、それはベストな結論でなかったかも知れない。しかし、最も多数の人たちが納得した結論だから、それがいい、と考えるのが民主主義である。
◇
こんどの首相発言は、この民主主義の根本原理を、真っ向から否定している。大多数の国民の理解を待っていても、せいぜい最もベターな結論しか得られない。この最もベターな結論より、オレが考えたベストの結論のほうが良い結論だ。このことに議論の余地はない。愚かにも、そのように自分勝手に思い込んで、自分の結論を国民に押し付けようとしている。
これは、民主主義を否定し、独裁者を目ざす政治家の発言だ、と言われてもしかたがない。
◇
首相は、なぜ民主主義を否定したいのか。
首相は憲法の平和主義を否定したいのだ。国際情勢が変化したという口実で「諸国民の公正と信義に信頼」(憲法前文)することをやめ、抑止力という名前の「武力による威嚇」(憲法第9条)を解禁しようとしている。それが安保法制案なのだ。
しかし、大多数の国民は平和主義の否定に反対している。だから、民主主義を否定しないと、平和主義も否定できない。このことに、ようやく気づいたようだ。
それなら堂々と独裁的で好戦的な憲法を提案すればいい。だが、そんな提案は、木っ端微塵に粉砕されるだろう。だから、それもできず、没論理で姑息な言辞を弄して、誤魔化そうとしている。
◇
この姿勢は、大多数の農村の人たちの反対を押し切って、財界やアメリカにとって不都合な農協、戦後の経済民主化のなかで、先人たちが勝ち取った誇り高い農協を、つぶそうとしている姿勢と全く同じである。
また、この姿勢は、大多数の国民が反対しているのに、財界やアメリカにとって好都合なTPP交渉を、秘密裡に押し進めようとする姿勢と全く同じである。
これら全てを、厳しく糾弾しなければならない。
(前回 独裁化する自民党)
(前々回 ギリシャ問題にみる政治と経済)
(「正義派の農政論」に対するご意見・ご感想をお寄せください。コチラのお問い合わせフォームより、お願いいたします。)
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(119) -改正食料・農業・農村基本法(5)-2024年11月23日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践 (36) 【防除学習帖】第275回2024年11月23日
-
農薬の正しい使い方(9)【今さら聞けない営農情報】第275回2024年11月23日
-
コメ作りを担うイタリア女性【イタリア通信】2024年11月23日
-
新しい内閣に期待する【原田 康・目明き千人】2024年11月23日
-
基本法施行後初の予算増確保へ JAグループ基本農政確立全国大会に4000人 生産者から切実な訴え2024年11月22日
-
「適正な価格形成」国関与で実効的に JA群馬中央会・林会長の意見表明 基本農政確立全国大会2024年11月22日
-
JAグループ重点要望実現に全力 森山自民党幹事長が表明 基本農政確立全国大会2024年11月22日
-
農林水産省 エン・ジャパンで「総合職」の公募開始2024年11月22日
-
鳥インフル 米モンタナ州、ワシントン州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2024年11月22日
-
鳥インフル オランダからの生きた家きん等 輸入を一時停止 農水省2024年11月22日
-
11月29日「ノウフクの日」に制定 全国でイベント開催 農水省2024年11月22日
-
(411)「豚ホテル」の異なるベクトル【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年11月22日
-
名産品のキャベツを身近に「キャベツ狩り選手権」開催 JA遠州中央2024年11月22日
-
無人で水田抑草「アイガモロボ」NEWGREENと資本業務提携 JA三井リース2024年11月22日
-
みのるダイニング名古屋店開業2周年「松阪牛ステーキ定食」特別価格で提供 JA全農2024年11月22日
-
【スマート農業の風】農業アプリと地図データと筆ポリゴン・eMAFF農地ナビ2024年11月22日
-
自動運転とコスト【消費者の目・花ちゃん】2024年11月22日
-
イチゴ優良苗の大量培養技術 埼玉農業大賞「革新的農業技術部門」で大賞受賞 第一実業2024年11月22日
-
「AGRIST Aiサミット 2024」産官学金オープンイノベーションで開催2024年11月22日